絵本で幼児教育

絵本を使って子供と死を考える・おばけと死を扱う絵本

絵本で幼児教育

幅広い優れた絵本を子供たちに

コロナ禍にあった、ある夏の日、子供の父方の祖父が亡くなりました。

お葬式で、2歳たらずの子供は、久しぶりに祖父に対面しました。

祖父との少なすぎる思い出を、どれほど覚えているのか分かりませんが、子供はその後、何ヶ月もの間、しばしば遺影を大切そうに自分の近くに置いて、「ジィジ」と呼びかけていました。

葬儀の前後で、私はあえて子供に「死」に関する説明をしませんでしたが、2歳の子供なりに祖父の死を理解していたように感じます。

今回は、子供と「死」を共有するときに読む絵本を考えてみました。

子供のまわりには死に関する情報があふれている

時は移ろい、ごっこ遊びが盛んになってきた2歳半。

子供は「くまさん死んじゃった」、「私、死んだの」というような言葉を使うようになりました。

しつけに使われる死に関する情報

 

思い返せば、私が歩道を歩くことの大切さを子供に教えていたときに、「車にぶつかったら死んでしまうんだよ」と言ったことがあります。

保育園でも地震や火災などがおきることを想定した避難訓練が定期的に行われ、子供たちを死のリスクから遠ざけるための教育が徹底されています。

日常からもたらされる死に関する情報

 

地面を歩いているアリを潰してしまったり、金魚やメダカ、犬や猫が亡くなることは日常的に起こります。

以前、保育園の送迎時に、上の学年の子供たちが「死ね〜!」と叫びながらはしゃいでいる様子を見たことがありました。

2歳の子供でも、生活の中で「死」の概念に触れる機会がたくさんあるようです。

いつしか「死」とはどういうものなのか、親が先に責任をもって伝えておくべきだったと後悔する時が来るかもしれない、と不安になりました。

死をテーマにした絵本をつかって子供と死を共有する

絵本は、言葉で伝えるには難しい概念を、簡潔にわかりやすく伝えるのにうってつけのツールです。

「死」を扱った絵本には、いくつか私が優れた作品だと思うものがあります。

1つ目は、2,3年生の小学校の教科書(光村図書、教育出版)に掲載されたものです。

ずーっとずっとだいすきだよ

 

ずーっと ずっと だいすきだよ (児童図書館・絵本の部屋)(Amazon)

主人公の成長とともに、年老いていく犬のエルフィー。

ある朝、目がさめると、エルフィーは死んでいました。いつか他の動物を飼うことがあっても、その動物たちに「大好きだ」ということを伝え続けようと、主人公は思います。

犬を飼っていた私は、涙なしに読めません。「大好き」という気持ちを言葉で伝えることについて考えさせられる絵本です。

悲しい内容ですが、この絵本を子供は何度もリクエストします。

パパにはともだちがたくさんいた

 

パパには ともだちが たくさんいた (Suemori Chieko books)(Amazon)

子供たちが、突然亡くなってしまった父の職場を訪ね、父の仕事仲間や、友達などたくさんの人たちに会い、父に対して尊敬の念を抱いていきます。

著者の末盛千枝子さんは、夫であったNHKプロデューサーを若くして亡くされています。

この絵本は、父親を亡くした子供たちに書かれたものです。

良書として紹介される死生観を扱った絵本は少ない

 

いずれも、絵は優しいタッチ。少ない文字で家族の悲しみをストレートに表現しています。

他にも素晴らしい絵本はありますが、人の死を扱う幼い子供向けの良質な絵本は、紹介されている数が少ないと感じます。

特に、幼い子が分かるようなシンプルなものは、なかなかありません。

おばけの絵本をとおして「絵本が子供に与える影響」を考える

死とは少し違いますが、おばけにフォーカスした絵本はたくさんあります。

私は、せなけいこさんの絵本を、子供が1歳半になった頃からたくさん読み聞かせています。

おばけがたくさん登場しますが、おばけをうまく表現しようと、おどろおどろしい声色で読むと、子供はケタケタ笑ってくれます。

おばけは子供にとって怖い存在

 

そんなある日、寝かしつけていたら、子供が突然シクシク泣き出しました。

なんで泣いてるの?」「怖いよ〜」「何が怖いの?」「おばけが連れてっちゃうよ〜

子供が絵本の内容を徐々に理解したのでしょう、思い出して、突然怖くなったようです。

ねないこだれだ

 

ねないこだれだ (いやだいやだの絵本)(Amazon)

夜はおばけの時間。寝ないで起きている子供は、おばけに連れて行かれてしまいます。

シンプルな構成なので、ファーストブックに選ぶ方がたくさんいます。寝ないとおばけがくるよ、といった具合に、しつけにも便利ですよね(笑)。

ノンタンおばけむらめいろ

 

ノンタンおばけむらめいろ (ノンタン あそぼうよ14)(Amazon)

くまさん、うさぎさん等みんなでおばけむらの探検にでかけます。みんなはおばけを怖がっていたのに、ノンタンだけは強がって、おばけと仲良くなろうとします。

先程の怖がって泣く2歳の子供に、

ノンタンは、おばけとお友達になったでしょ。おばけがいたら、仲良くなればいいよ。

と慰めると、納得して寝てくれたのでした。

絵本が子供に与える影響の大きさは読む量に比例する

 

何度も読み聞かせた絵本は、その影響力も大きくります。

一方、複数の絵本で様々な捉え方があることを子供が理解すれば、影響力は相対的に小さくなります。

そのことを、このエピソードは示していると感じました。

おばけにもいろいろある

 

せなけいこさんのおばけは、親しみやすい切り絵であるものの、どこか超然として、神様にも近い存在のように感じます。

一方、ノンタンのおばけは、フレンドリーで、愉快な存在です。

様々な絵本を通して、怖い存在のはずのおばけにも、実は色々ある、と子供に伝わればいいなと思います。

死とおばけとが描かれた絵本

日本では、本来、死は身近にあって、今ほどタブーではなかったと聞いたことがあります。

また、日本中・世界中に、おばけの話があり、おばけを使って、死を受け入れる工夫がされてきたことが伺えます。

死とおばけとが描かれた絵本もご紹介します。

おじいちゃんがおばけになったわけ

 

親しい人がおばけになるあらすじで、優れた絵本が2005年に出ています。デンマークの絵本で、内容は年長さんから小学校低学年の子供向けです。

おじいちゃんがおばけになったわけ(Amazon)

主人公は、大好きな祖父を心臓発作で亡くします。

お母さんは「おじいちゃんは天使になる」と言い、お父さんは「土になる」と言うのですが、その夜、祖父は、おばけとなって主人公の部屋にやってきます。

Amazonのレビューにもありますが、おじいちゃんを亡くした子供にも安心して読み聞かせられる、心温まる絵本です。

ママがおばけになっちゃった

 

2015年に出版され、ヒットした作品があります。

ママがおばけになっちゃった! (講談社の創作絵本)(Amazon)

交通事故で亡くなった母が一時おばけとなって子供に会いに来ます。

子供が母に隠していたことが次々に発覚していくなど、コミカルに場面は展開していき、最後にお互いの気持ちを伝えお別れとなります。

幼い子供とその親をターゲットにした、死を扱う絵本が少なかったことが、ヒットに繋がったと感じます。

のぶみさんの絵本「ママがおばけになっちゃった」に対する私の評価

「ママがおばけになっちゃった」に関する著者のぶみさんの

子どものトラウマになったほうがいいと思います。

といった過激なコメントとは裏腹に、死というものをシンプルに説明する絵本、という位置づけで私はこの絵本を捉えました。

死を重たい表現で扱わない作品はたくさんある

 

死をあまり悲しい表現で語らない作品は、大人向けの作品にいくらでもあります。

ギャグの要素を取り入れることで、かえって死を考えさせる作品すらあります。

この絵本も、作品としては成立していると感じました。

死後の世界はだれにもわからない

 

死はこわくない(Amazon)

立花隆さんはジャーナリストとして死を追求されてきました。

立花さんが言うように、すべての死が穏やかなものであるならば、死んだ直後おばけになった母のセリフは、「ママがおばけになっちゃった」のママのような軽やかなものになるかもしれない、と思いました。

売れている絵本に対する過度な批判への批判

のぶみさんの絵本の批判で代表的なものとしては、以下の4つがあります。

これらの批判は、「死」をテーマにした絵本をあつかうことの難しさを教えてくれるものですが、少々度が過ぎているとも感じます。

①承認欲求の強い母をターゲットにしているという批判

 

日本には、お金儲けを卑しいと考える風潮があります。

承認欲求の強い母をターゲットにしているという批判は一見、お金儲けを優先して子供の気持ちを考えていない絵本だ、といった趣旨で、絵本に批判の矛先が向けられているように思えます。

承認欲求の強い母が購入して何がわるいのか

 

しかし、この評価を読んだ購入者はきっと傷つくと思います。

自分の様々な体調や感情と付き合いながら子育てする「母親」という消費者を理解せず、見下している人の評価であるように感じます。

少なくとも私は、購入者ではないけれど、嫌な気持ちになりました。

純粋に良い絵本だと判断した母親も多かったのでは

 

私は、のぶみさんの絵本が、身近な「死」を説明する上で分かりやすいと感じました。

子供に読ませてみようと純粋に思ってこの絵本を買った人がいても何ら不思議ではありません。

統計的なデータもないのに、母親を貶める表現を使ってまで、母親のみをターゲットにしたことを主張する必要はあるのでしょうか。

②子供の親離れを阻害するという批判

 

特定の絵本が親離れを阻害するという実証データはありません。

本書はそもそも難しいテーマの絵本です。

読む価値のあるタイミングが来たと親が責任を持って判断した時に、子供の性格を考慮して、反応を見ながら一対一で読み聞かせる、そんな絵本だと思います。

絵本が売れてしまったことで、心構えなしに読む大人が出てきて問題になったケースが、大きく紹介されているに過ぎないのかもしれません。

③親を亡くした子供達が平積みになった絵本を見て傷つくという批判

 

親を亡くした子供たちは、親子で笑っている絵本の表紙を見ても傷つく可能性があります。

書店のディスプレイの問題であり、絵本の問題とは切り離して考えるべき部分があります。

④子供が絵本を嫌いになるという批判

 

どんな絵本でも、大人が強要するなら子供は絵本を嫌いになるでしょう。

子供が絵本を選ぶスタイルを取る限り、子供は絵本を嫌いにはならないと私は思います。

難しいテーマを扱う絵本に対して冷静な対応を

幼い子供に、「死」というものをある程度理解してもらう必要があると考える大人はそれなりにいることでしょう。

ところが、大人がコントロールしながら、子供にうまく伝えるツールとしての絵本は少ないといえます。

のぶみさんの絵本はそんな大人たちにとって良い選択肢になるだろうと思いますし、このような過度な批判はいかがなものかと感じます。

読み聞かせ方を提案する

 

のぶみさんの絵本に対して批判をされる方は、批判して終わるのではなく、「死」をテーマにした絵本を購入した人に対して、子供の年齢や状況によって、読み聞かせの際に気をつけるべきこと、話してみるべきことを提案して欲しいと思います。

他の優れた作品を創作したり発掘したりする

 

また、出版業界の方は、売れた絵本にすがったり他社の批判をしたりするだけでなく、死生観について考えさせる新しい優れた作品をたくさん創り出し、既存の優れた作品とともに積極的に紹介して欲しいと思います。

さいごに

私は、自分の子供に、死とは何か、死に対して様々な考え方や捉え方があること等を、時間をかけて伝えていきたいと思っています。

絵本は難しいテーマを幼い子供に伝える有効なツール

 

「死」を幼い子供と共有するには、絵本が一つの有力な選択肢になると考えています。

しかし、「死」を扱う絵本は、シンプルかつ優れたものが少ない上、扱いが難しいという側面があります。

たくさんの絵本を通してバランス良くメッセージを伝える

 

おばけの絵本のところで、複数の絵本を読み聞かせると、1冊の絵本の影響力は相対的に小さくなることに触れました。

「死」を扱う絵本で傷ついた子供がいたとしても、別の絵本が癒やしてくれる可能性は十分にあると思います。

死生観について話す機会を提供する優れた絵本が沢山あるといいな、と思う今日このごろです。

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