ノンタンの色使いが大好き
私が幼い頃大好きだったノンタン。
ノンタンの魅力の一つは色使いではないかと思います。
地面の温かみある黄色、岩や草は時に紫色、背景の白。ふにゃふにゃの線と、面を埋める色塗りのハケ目が、絵に柔らかい印象を与えています。
ノンタンの魅力や幾多の謎を紐解くべく、作家さんの著書を読み、私なりにノンタンを分析してみました。
ノンタンの絵はこうして作られる
出典:ブログ「日本画の杜」前本利彦 椿下白猫
ノンタンたちのカラフルでおしゃれな部屋
「ノンタン」シリーズに登場するキャラクターそれぞれのお部屋の色使いが大好きでした。
「おねしょでしょん」で登場するノンタンのお部屋。
出典:偕成社公式サイト「ノンタンおねしょでしょん」
緑のフレームに赤い枕と裏側が黄色いお布団のベッドに、幼い頃の私は憧れました。赤い枠の窓や振り子のついた時計も可愛らしい!
うさぎさんの部屋も、ベッドにぬいぐるみがかかっていて、にんじんの模様のお布団が可愛らしく、ぶたさんの部屋の美しいカーペットも、おしゃれですよね。
ノンタンの家の西洋式のライフスタイル
ノンタンは子供部屋で1人で眠ります。
また、「ノンタンおやすみなさい」では、ノンタンの家に西洋式の置き型バスタブがあり、ノンタンが1人で泡風呂に入って体を洗います。
子供の頃の私にとっては、ノンタンのライフスタイル自体が憧れでした。
ノンタンの絵は大和絵の手法(岩絵具)で塗られている
子供に絵本を読み聞かせるつど、味わいある絵と独特の色使いに魅了されていた私でしたが、大友康匠さん・幸子さんによる以下の著書に、ヒントが書かれていました。
二人でノンタン 文藝春秋(Amazon)
「ノンタン」の画法は、日本古来からある大和絵の手法によっています。あの重要文化財、国宝『源氏物語絵巻』と同じ手法なのです。(31ページ)
子供でも親しめるカラフルな絵ですが、岩絵具を使用されていたとは驚きました。
岩絵具は発色が良いので、たしかに絵本に用いることはできそうですが。。
黒い線はなんと、墨。
岩絵具の間に墨が入ることで、それぞれの色が引き立ちます。
墨を筆で波打たせながら描くことで柔らかい印象になります。
夜の描写は明るい
ノンタンの色使いを特に印象深く感じるのが、「ノンタンおやすみなさい」の屋外のシーン。
真っ暗なはずの夜の背景が、薄い水色になっています。
出典:偕成社公式サイト「ノンタンおやすみなさい」
ふくろうくんとのおにごっこで、おおきなみずたまりにバッシャーン!するところでは、背景が明るい黄色で塗られています。
出典:ノンタンおやすみなさい
私は、特にこの黄色い背景に感銘をうけました。
別の夜のシーンといえば、「ノンタン!サンタクロースだよ」の空。
こちらも真っ暗な夜が、薄い青で描かれています。
出典:偕成社公式サイト「ノンタンサンタクロースだよ」
ノンタンの色使いは著者が絵画教室で子供たちから影響を受けた
ノンタンの色使いには特徴があるなと、子供に絵本を読み聞かせるつど感じていた私でしたが、「二人でノンタン」に、以下のようにヒントが書かれていました。
子供たちの絵はこころの中に映し出された世界を描くものだと、ミスターノンタンもミセスノンタンも知らされました。こうした絵の描き方は後になって、ノンタンの絵本を作るときに生かされました。(略)子供の眼は明るいところも暗いところも双方はっきり見えるので、(略)遠くも近くも暗いところもはっきり描かれるのです。(172ページ)
夫婦で絵画教室を開いていたときの様子です。
幼い頃の私がノンタンの色使いに疑問を抱くことはありませんでしたが、子供目線で絵を描くことが徹底されていたからかもしれません。
色は簡単に決まらない
著書の中で、大友康匠さんはミスターノンタン・幸子さんはミセスノンタン又は眠りダボハゼと表現されています。
ミスターノンタンは夜型、ミセスノンタンは朝型の生活だったので、絵本の試作品の色塗りは交互に行っていたようです。
ミセスノンタンは誰はばかることなく思う存分塗りたい色を塗っていきます。鼾をバックミュージックに、キラキラした朝日の中で絵筆は踊ります。お日さまが真南に来た十二時ごろ、ミスターノンタンが起きだしてきます。(略)いよいよ夜の十一時。「眠りダボハゼ」はもうとっくに眠りにつきました。ミスターノンタンはせっせと色を塗りはじめます。(略)ミセスノンタンが布団からはい出してきます。(略)「ああ!色が変わっている。やられたあ!」
「ノンタン」の色使いは、大友康匠さん・幸子さんが細部に至るまで意見をぶつけ、試行錯誤して生み出されたものなんですね。
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