絵本で幼児教育

二人でノンタン・著作権裁判から絵本の魅力を読み解く

絵本で幼児教育

ノンタンが愛される理由を探る

子供が生まれてみて、あらためて絵本を書店に見に行ってみると、自分が子供の時に親しんでいた作品が絶版にならずに書店に平積みになっていました。

しかも、私が幼い頃大好きだったノンタンについては、続編がたくさん出ています。

ノンタンの魅力や幾多の謎を解明すべく、著者の本著作権裁判の判例を読んでみましたので、今回はその内容を少しご紹介します。

ノンタンにはたくさんの作品がある

私が幼い頃大好きだったノンタンにはたくさんの作品があります。

幼い頃は10冊しかなかった以下のシリーズも、23巻にまで増えていました。

しかし、私が知らなかった11巻目以降(以下、「後半のノンタン」などと呼ぶことにします)のノンタンは、テイストが少し違います。

ノンタンのテイストの変化

 

私の感じた違いを挙げるとすると、以下の通りです。

✔ 前半と後半で私の感じた違い
・前半と比較して、単調な話が繰り返される作品が多い
・迷路のモチーフが多用されている作品が多い
・後半は、くねくね曲がった線が大味で背景が簡素、絵がどことなく下手
・時々漫画の枠のような表現が導入されている
・前半で出版された絵本の世界観や設定が、後半で覆されている部分がある

以下の記事で「ノンタンあそぼうよ」シリーズの絵本を1冊ずつご紹介しています。
 

後半のノンタンの魅力と謎

 

しかし、後半の作品も、魅力が失われたというわけでは全くありません。

むしろ、私の子供は後半に出版された絵本を特に好んでリクエストします。

以下の記事にその時の様子を少し載せています。
 

子供と一緒に読む私としては、つい、この前半と後半の違いについて、背景や理由を探りたくなるというものです。

大友夫妻はとっても魅力的でクリエイティブな夫婦

 

二人でノンタン 文藝春秋(Amazon)

まずは「ノンタン」を作られた大友康匠さん・幸子さんの著書「二人でノンタン」を読み、私なりにノンタンを分析してみることにしました。

こちらの著書には、大友康匠さん・幸子さんの、生き生きとしたコミュニケーションが描かれています。

二人の幾度ものぶつかり合いによって、ノンタンシリーズが生み出されていった様子が伺われます。

ノンタンの作者は離婚し、著作権裁判を起こした

 

また、離婚や著作権裁判の騒動について事前に知っていたので、二人の結婚前後の心温まるエピソードを読んだときには涙が出てしまいました。

✔ 二人の出会いと別れ
1969年頃
幸子さんは漫画家の大友康匠さんに弟子入り。
1970年4月30日に結婚。
1975年4月〜5月偕成社に『あかんべきつね』を持ち込み、
1976年8月に2作、10月『あかんベノンタン』を刊行。
1977年7月23日に長女が誕生し、海辺の家へ引っ越し。
1982年4月『二人でノンタン』を文藝春秋から刊行。
1984年6月『おみちゃん さっちゃんのこども え じてん』を求龍堂から刊行。
第二子流産の後、
1984年11月23日から別居し、
1985年5月14日に協定離婚しています。
1990年4月10日幸子さんが著作権をめぐり訴訟。
1995年1月16日大友康匠さんが61歳で死去。
1998年3月30日に東京地方裁判所で判決が降り、
1999年11月17日東京高等裁判所で結審しました。

後半の作品は、著作権がキヨノサチコさん単独で認められた後につくられました。

著作権裁判の内容と、二人でノンタンの内容との食い違いについて

 

著作権を争った『共同著作名義「ノンタン」絵本事件』判例全文によると、

原告は、当初は、指導者としての夫を立て、また後には夫婦絵本作家としてできあがったイメージを維持するために、原告と亡大友との共同著作名義を黙認していたものと考えられ、証人鴻池守の証言及び原告本人尋問の結果によれば、「二人でノンタン」もそのようなイメージを所与の前提として著述されたものと認められる。

とあります。

「二人でノンタン」のパワフルで濃密で豊かな内容と、判決文にあるドライな内容とは一見相反するものだと感じます。

「二人でノンタン」も判決文も、それぞれ真実に光を当てている

 

しかし、「二人でノンタン」は面白いんです。こんなの、真実ぬきに書くことなんてできません。

離婚とは、オセロのように、それまであった事実が白から黒、黒から白に塗り替えられてしまうような大きな力が働くものです。

離婚前の本書は、ちゃんと真実の一側面を描いているものであると私は考えています。

ノンタンの著者はキヨノサチコさん

 

ただし、判決文はさすがに説得力があり、私もこの内容に従って、ノンタンの著者はキヨノサチコさんである前提で捉えることにしました。

この判決は、一人の女性が、自立した大物作家として公に認められた瞬間であったと感じます。

私にとって、キヨノサチコさんは、絵本を創造する天才クリエイターとして、働く女性として、尊敬する人であることは間違いありません。

キヨノサチコさんは女性も強くなければならないと考えていた

 

著書の中では、子育ての姿勢についてもキヨノサチコさんの考え方が示されています。

女の子を出産して、これからの女性は強くなければならない、と、子育てに意気込んでいる様子が描かれています。

私も同感です。。。

ノンタンの魅力は二人の能力の結集

一方で、「著者が誰なのか」と「創作に参加した人が誰なのか」というのは別の話です。

他の記事にも書きましたが、絵本の読み聞かせは双方向のコミュニケーションであり、親自身が楽しくないと、絵本の読み聞かせを継続することはできません。

ですから、ノンタンが愛され、読み継がれている理由の一つは、「親と子の双方にとって面白い絵本だから」だと思います。

大友康匠さんの作風について

 

『共同著作名義「ノンタン」絵本事件』判例全文によると、離婚後に大友さんが単独で描いて編集者のもとに持ち込んだ「ノンタン」について、

長年絵本の編集に携わった鴻池守から見て、亡大友の持ち込んだ作品は、見開きのぺ一ジに時間と空間の違う複数の場面が描かれていて幼児にわかりにくいという画面構成上の問題点と、内容が子供の世界ではなく、しつけ教育的な筋立てで親の喜びそうな視点から描かれており、ストーリーの展開や子供に対する見方が本件絵本(一)と対極的な違いがあり、補助参加人が絵本として出版するに足る水準に達していないと判断され、

とあります。大友さんは、大人目線でストーリーを構築する傾向があったのではないかと思います。

キヨノサチコさんの作風について

 

一方、キヨノサチコさんが単独で作られた後半出版の「ノンタン」は、私の子供に大人気ですが、大人の私にはちょっとついていけない部分があります(笑)。

キヨノサチコさんは、子供目線でストーリーを構築する傾向があったのではないかと思います。

お二人の力が合わさったからこそ、今日のノンタン人気が醸成されたことは間違いありません。

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