土地の登記の物的状況や権利的状況とその変動要因を把握する
土地の不動産登記は土地の物的状況や権利的状況を公示するという役割をになっています。
今回は、土地の表題部や権利部における土地の状況や単位、それらの変動について説明します。
不動産登記に関して参考とした書籍
不動産登記の本はたくさん出版されていますが、いずれも同じような内容となっていて、選ぶのに苦労された方もいらっしゃると思います。
このブログでは、以下の著書の流れに沿って説明していきます。
わかりやすく解説されていておすすめです。
土地の表示に関する登記
まずは、土地と建物の表示に関する登記について説明します。
表示に関する登記では、不動産の物的状況を公示しています。
土地においては所在、地番、地目、地積などが登記され、建物においては所在、家屋番号、種類、構造、床面積などが登記されています。
(表示に関する登記の登記事項)
第27条 土地及び建物の表示に関する登記の登記事項は、次のとおりとする。
一 登記原因及びその日付
二 登記の年月日
三 所有権の登記がない不動産(略)については、所有者の氏名又は名称及び住所並びに所有者が二人以上であるときはその所有者ごとの持分
四 前三号に掲げるもののほか、不動産を識別するために必要な事項として法務省令で定めるもの
出典:不動産登記法27条(一部省略)
法務省令とは不動産登記規則のことです。
不動産登記の表示に関する登記の役割は物的状況や単位を表示すること
物的状況ははじめに登記されてから、アップデートされていきます。
物的状況の変化の例 | 土地 | 建物 |
不動産の発生 | 埋立て | 新築 |
不動産の変化 | 宅地造成 | 増改築 |
不動産の消失 | 水没 | 取壊し |
土地はとぎれることなく連続しており、建物も複数棟が1つにつながっていたり複数の建物で1つの役割をになっていたりします。
登記で表示させるには、表示単位をきめたり、利用実態に合わせて変更したりすることになります。
表示単位の変更の例 | 土地 | 建物 |
不動産を纏める | 合筆 | 合併 |
不動産を分ける | 分筆 | 分割 |
物的状況の変化については登記が義務付けられているので登録免許税は課せられません。
一方で、表示単位をかえるときは申請者の意志によるため登録免許税を納める必要があります。
表題登記をすることで登記簿が作られる
表題登記とは、表題部に最初にされる登記のことをさします。
(定義)
第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
二十 表題登記 表示に関する登記のうち、当該不動産について表題部に最初にされる登記をいう。
出典:不動産登記法2条20号
平成17年3月の法改正までは「表示登記」とよばれていました。
未登記の土地や建物の所有権を取得したら、その日から1ヶ月以内に表題登記をすることが義務付けられています。
(土地の表題登記の申請)
第36条 新たに生じた土地又は表題登記がない土地の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から一月以内に、表題登記を申請しなければならない。
出典:不動産登記法36条
たとえば、道路や水路としてつかわれなくなった未登記の土地が払下げられたときは、表題登記がなされ、原因及びその日付の欄に「不詳」とかかれます。
土地が埋め立てにより生まれたときは、原因及びその日付の欄に「令和○年○月○日公有水面埋立」とかかれます。
埋立や払下げの表題登記は国や自治体、払下げをうけた者などがおこない、表題部所有者欄には申請者が記載されます。
土地や建物に共通する表題部の記載事項
では、土地や建物に共通する表題部の記載事項を、個別にみていきます。
不動産番号
出典:法務省 土地の全部事項証明書(不動産登記)の見本 抜粋・加工(以下同様)
不動産番号は、不動産を特定するための番号です。
(不動産番号)
第90条 登記官は、法第二十七条第四号の不動産を識別するために必要な事項として、一筆の土地又は一個の建物ごとに番号、記号その他の符号を記録することができる。
出典:不動産登記規則90条
登記申請するときに不動産番号をかけば、不動産の表示を省略することができます。
ミスを防ぐためにも普通は省略しません。
調整
調整欄には、紙の登記簿をコンピュータ様式へ移記した年月日がかかれますが、最初からコンピュータ様式で登記されているときは「余白」とかかれます。
原因及びその日付
原因及びその日付欄は、埋立などで土地の生まれた年月日がかかれますが、いつ土地ができたか不詳な場合や、分合筆などの場合、日付はかかれません。
また、建物では新築年月日が表題登記のときにかかれ、増改築年月日が変更登記のときにかかれます。
登記の日付
登記の日付は登記官が登記を完了した年月日がかかれます。
権利部では登記の受付年月日が対抗力を備える上で重要ですが、分合筆などの登記の効力は登記完了によって生まれるので表題部では登記の日付が重要になります。
所有者欄がある表題部と所有者欄のない表題部
表題部所有者欄には、所有権を明確にするための所有権保存登記をおこなうための準備のため住所と氏名が記録され、所有権保存登記がおこなわれると抹消されます。
紙の登記簿において所有権保存登記がおこなわれたあと、コンピューター様式に移記された場合は、表題部所有者の欄そのものがない表題部となります。
いくつかの例外をのぞいて表題部所有者だけが所有権保存登記を申請できるほか、建物の表題部所有者の記録は土地賃借権の対抗要件となるなど、表題部所有者欄は重要な役割をはたします。
表題部所有者不明土地の所有者探索と職権による更正登記
表題部所有者欄は、旧土地台帳の記載を引き継いでいるので、まれに住所と氏名が正しく記録されないまま現在にいたっている登記があり、取引する上での問題となっています。
✔ 正常でない表題部所有者記載例
・ 氏名のみで住所の記載がない
・ 共有者の氏名や持分の記載がない
・ 地域の共同体が所有し地名のみ記載
共有者については「山田太郎 外20名」などとかかれていたり、「大字○○」「字○○」などの字持地(あざもちち)の地名がかかれていたりします。
そこで、令和元年に「表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律」が施行されました。
登記官には所有者探索のための調査権限があたえられ、所有者等探索委員を任命して調査させることもできるようになりました。
また、職権により探索結果を登記に反映させるための不動産登記法の特例が設けられました。
滅失登記は閉鎖される
土地が水没したり、建物が取壊されたときから1ヶ月以内に滅失登記をおこなわなければなりません。
(土地の滅失の登記の申請)
第42条 土地が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その滅失の日から一月以内に、当該土地の滅失の登記を申請しなければならない。
出典:不動産登記法42条
滅失登記では、所在、地番、地目、地積に下線を引いて抹消して、原因及びその日付欄に「令和1年2月3日海没」と滅失の原因を記録します。
また、〔登記の日付〕として〔令和1年3月1日同日閉鎖〕などと、年月日とともに閉鎖された旨を表示します。
滅失した不動産の登記は閉鎖登記簿となります。
土地登記簿の表題部
土地登記簿と建物登記簿の表題部に共通してのっている項目(調整、不動産番号、原因及びその日付、登記の日付、所有者)についてはすでに説明しました。
ここでは、土地の不動産登記の表題部にのみ見られる項目を説明します。
土地登記簿の表題部の構成要素
土地登記簿の表題部の残りの構成要素を説明します。
地図番号
登記簿にのっている土地について、国土調査による地籍図などの地図がつくられて、登記所に備え付けられているときは、地図の番号が記録されます。
筆界特定
土地の筆界特定の申請がなされて、筆界が特定されたときに、その旨が記録されます。
筆界特定はあとで詳しく説明します。
所在・地番・地目・地積
所在以下は登記法に以下のようにさだめられています。
(土地の表示に関する登記の登記事項)
第34条 土地の表示に関する登記の登記事項は、第二十七条各号に掲げるもののほか、次のとおりとする。
一 土地の所在する市、区、郡、町、村及び字
二 地番
三 地目
四 地積
出典:不動産登記法34条(2項は省略)
地番は①、地目は②、地積は③の番号がついていて、変更登記や更正登記のときに原因及びその日付欄で、変更箇所を示すために使われます。
行政区画等の変更、重複地番の解消、住居表示の実施などのために、所在が変更されたときは、登記官が職権で変更登記をおこないます。
所在を構成する要素(市区町村・丁目・大字・字)と地番
所在や地番は、位置を特定するための情報を組み合わせたものです。
所在
所在には、都道府県をのぞいた市区町村、町名、丁目、大字(おおあざ)、字(あざ)などを記録します。
ちなみに町名というときの「町」は地方公共団体ではなく、地方自治法による「町」と「字」であり、「字」の中に「大字」「小字」が含まれます。
第260条 市町村長は、政令で特別の定めをする場合を除くほか、市町村の区域内の町若しくは字の区域を新たに画し若しくはこれを廃止し、又は町若しくは字の区域若しくはその名称を変更しようとするときは、当該市町村の議会の議決を経て定めなければならない。
出典:地方自治法260条(1号と2号は省略)
明確な定義がなく、○丁目を大字、町名などとよぶこともあります。
大字の多くは、1889年(明治22年)の市制・町村制施行にともなう市町村合併で消えてしまった村の名前に由来します。
例えばA村が他の村と合併して新たにB村となったとき、新たな住所表記を「B村大字A」とし、これは町の合併であっても同様である。
出典:ウィキペディア(大字)
字は、大字に対して小字ともよばれ、古くからある地名に由来します。
大字のなかにたくさんの字が内包されていて、大字と字を組合わせて「大字○○字△△」などと所在があらわされます。
住居表示による整理がすすんでいるため、大字や字は○丁目にかわりつつあります。
地番
地番は、地番区域とよばれる一定の範囲ごとに、1番からつけられています。
ほとんどの地番区域は丁目や字とおなじ範囲で登記所(法務局)によりさだめられます。
(地番)
第35条 登記所は、法務省令で定めるところにより、地番を付すべき区域(第三十九条第二項及び第四十一条第二号において「地番区域」という。)を定め、一筆の土地ごとに地番を付さなければならない。
出典:不動産登記法35条
大字が地番区域となったときは、以下のような地番となります。
✔ 大字を地番区域とした時の地番の振られ方の例
・ 大字ABC 字D:1番〜80番
・ 大字ABC 字E:81番〜150番
・ 大字ABC 字F:151番〜200番
あるエリアで1番がない、と探してしまったことがありました。。。
ちなみに、上の図の例では、地番が101番とのみ書かれていますが、この101番が分筆されていくと、101番1、101番2、というように枝番がつきます。
枝番が49まであったときに、101番2が分筆されると、101番2と101番50とに分けられます。
地番の枝番が使いづらくなり住居表示による住所が導入された
枝番は分合筆のたびに無くなったり増えたりするため、宅地造成のときに整然とならんでつけられていた地番であっても、時を経ると飛び飛びになります。
そこで、郵便配達などの支障がでないように、市街化されたエリアについては市区町村であらたに住居表示をさだめています。
✔ 住居表示の番号の付け方
・ 道路方式:欧米でよく見られる
・ 街区方式:日本のほとんどの自治体が採用
道路方式は欧米で一般的な方式で、○○ストリート、○○アベニューなどの道路の名称と、この道路に接していたり、道路に通ずる道沿いにあったりする建物に振られた住居番号をつかって住所をあらわします。
街区方式では、道路や鉄道などの施設、河川などで分けられた街区に、町名(○丁目、大字○○、字○○など)ごとに番号(街区符号)を○○番というように付番していきます。
建物のエントランスの位置によって、時計回りに建物の住居番号がつけられていて、「町名+街区符号+住居番号」で住所をあらわします。
住所の「○番○」と、登記上の地番「○番○」は成り立ちが違います。
地番を調べる(法務局への問合せ・ブルーマップ・固定資産税課税証明書)
住居表示から地番をしらべる方法はいくつかあります。
上図のように、登記情報提供サービスの地番検索サービスをつかうと、すべてのエリアをカバーしているわけではないものの、手軽に住居表示から地番をしらべることができます。
法務局に電話などで問い合わせれば、住所をもとに地番を教えてくれますし、法務局に備え付けられているブルーマップとよばれる住居表示と地番とを重ねあわせた図で調べることもできます。
✔ ブルーマップが閲覧可能な場所の例
・ 法務局
・ 市区町村役場
・ 国会図書館
・ 大規模な図書館
その他、ZENRINのブルーマップを購入したり、有料とはなるもののZENRINをふくめ民間ウェブサイトを閲覧したりすれば、その他公法規制とともに確認することができます。
固定資産税課税証明書などの税金関係の書類でも、地番や家屋番号をしらべることができます。
出典:広島市の固定資産課税台帳登録事項証明書(一部加工)
ほかにも以下のような資料で確認できます。
✔ 地番・家屋番号の記載された資料の例
・ 登記識別情報
・ 権利証
・ 固定資産税課税証明書
・ 納税通知書
地番のない土地(道路・里道・水路・地番脱落地)
出典:大阪法務局 登記所備付地図作成作業とは?(一部加工)
地番がない土地が公図上で確認されることがあります。
古い公図上では里道などの道路は赤く、水路は青く塗られていて、赤道・赤線、青線などとよばれ、地番が振られていないのでかきこまれていません。
ちなみに、公図はマイラー公図を経てコンピューターへ写され、赤や青で塗られたところは「道」「水」と表示されました。
赤線、青線の部分には地番が振られませんでした。
このような道路や水路の多くは道路法や河川法の対象外であり、法定外公共物とよばれます。
出典:ご存知ですか?国有財産(一部加工)
道路や水路としてつかわれている土地は、平成17年3月31日までに市区町村に国から無償譲渡されました。
道路や水路としてはつかわれなくなった土地は、旧法定外公共物とよばれ、国が管理していますが、建物の敷地などにつかわれている場合は、測量をおこなって使用者に売却されます。
その他、里道などの道路や水路ではない土地にも、地番がないものがあり、地番脱落地とよばれます。
地目と地積を掘り下げる
表題部の所在や地番が位置をあらわす一方、地目と地積は土地のありかたをあらわしています。
これから地目と地番について掘り下げて説明します。
地目は全部で23種類ある
地目は土地の用途をあらわすもので、23種類にわけられ、1つの土地に複数の地目をかくことはできません。
土地のつかわれ方がかわって登記上の地目にあわなくなったら、1ヶ月以内に地目変更登記をすることが義務付けられていますが、変更されていないケースもたくさんあります。
(地目)
第99条 地目は、土地の主な用途により、田、畑、宅地、学校用地、鉄道用地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野、墓地、境内地、運河用地、水道用地、用悪水路、ため池、堤、井溝、保安林、公衆用道路、公園及び雑種地に区分して定めるものとする。
出典:不動産登記規則99条
不動産登記事務取扱手続準則にはそれぞれの定義がのっています。
(地目)
第68条 次の各号に掲げる地目は、当該各号に定める土地について定めるものとする。この場合には、土地の現況及び利用目的に重点を置き、部分的にわずかな差異の存するときでも、土地全体としての状況を観察して定めるものとする。
(1) 田 農耕地で用水を利用して耕作する土地
(2) 畑 農耕地で用水を利用しないで耕作する土地
(3) 宅地 建物の敷地及びその維持若しくは効用を果すために必要な土地
(4) 学校用地 校舎、附属施設の敷地及び運動場
(5) 鉄道用地 鉄道の駅舎、附属施設及び路線の敷地
(6) 塩田 海水を引き入れて塩を採取する土地
(7) 鉱泉地 鉱泉(温泉を含む。)の湧出口及びその維持に必要な土地
(8) 池沼 かんがい用水でない水の貯留池
(9) 山林 耕作の方法によらないで竹木の生育する土地
(10) 牧場 家畜を放牧する土地
(11) 原野 耕作の方法によらないで雑草、かん木類の生育する土地
(12) 墓地 人の遺体又は遺骨を埋葬する土地
(13) 境内地 境内に属する土地であって、宗教法人法(昭和26年法律第126号)第3条第2号及び第3号に掲げる土地(宗教法人の所有に属しないものを含む。)
(14) 運河用地 運河法(大正2年法律第16号)第12条第1項第1号又は第2号
に掲げる土地
(15) 水道用地 専ら給水の目的で敷設する水道の水源地、貯水池、ろ水場又は水道線路に要する土地
(16) 用悪水路 かんがい用又は悪水はいせつ用の水路
(17) ため池 耕地かんがい用の用水貯留池
(18) 堤 防水のために築造した堤防
(19) 井溝 田畝又は村落の間にある通水路
(20) 保安林 森林法(昭和26年法律第249号)に基づき農林水産大臣が保安林として指定した土地
(21) 公衆用道路 一般交通の用に供する道路(道路法(昭和27年法律第180号)による道路であるかどうかを問わない。)
(22) 公園 公衆の遊楽のために供する土地
(23) 雑種地 以上のいずれにも該当しない土地
出典:不動産登記事務取扱手続準則68条
用悪水路
用水という言葉には、飲用、工業用、消防用などの用途もふくまれますが、登記上は農業灌漑につかう水に限定されます。
悪水は、飲用にできない水や、雨水、水田や畑からの排水、生活排水、汚水があてはまります。
雑種地
露天の駐車場、資材置場、送電線鉄塔用地、ゴルフ場、飛行場、廃棄物処理場などがこれにあたります。
ただし、一筆の土地が住宅の敷地と駐車場に使われていれば、その土地の地目は宅地となります。
保安林
保安林は水源を守ったり土砂の流出をふせぐために農林水産大臣により指定され、都道府県知事から法務局に通知されることで登記されます。
ただし、指定されても地目が森林のままだったり、指定解除されても保安林のままだったりすることがあります。
保安林は伐採や区画形質の変更が制限され、開発のさまたげとなるので、開発を計画するときには行政に確認する必要があります。
公衆用道路
道路法上の道路や、2項道路のセットバック部分、行き止まりの私道もふくまれます。
職権登記の対象となりますが、現実には当事者の申請によることがほとんどで、地目が宅地のままとなっていることがあります。
公衆用道路の地目となれば、税務上「一般交通の用に供する」「公共の用に供する」土地であると判定されるための有力な判断材料になります。
保安林と同様に制限のある河川区域内の土地も登記対象となる
出典:江戸川河川事務所 川の利用案内(一部加工)
河川区域とは、河川を管理するために必要な区域で、基本的には堤防と堤防に挟まれた間の区間をいいます。
✔ 河川区域の種類
・ 通常水が流れている土地(1号地)
・ 堤防や護岸等の河川管理施設(2号地)
・ 1・2号地間で、1号地と一体管理(3号地)
河川区域をあらわす地目はないため、原因及びその日付の欄に「○年○月○日 河川法による河川区域内の土地」と記録して、登記を見る人に制限ある土地であることを注意喚起します。
地積は土地の規模や地目によって小数点以下の有無が決まる
地積とは、土地の面積のことで、㎡(平方メートル・平米)であらわしますが、まれに尺貫法の坪であらわした登記ものこっていて、地積欄に旧の字がついています。
土地の面積は、水平投影面積を測定したものとなり、小数点第二位まで表示(第三位以下は切り捨て)する場合と、小数点以下をぜんぶ切り捨てる場合とがあります。
✔ 小数点第二位まで表示
・ 地目が宅地または鉱泉地
・ 面積が10㎡以下
鉱泉地は貴重な土地なので、小数点以下もあらわします。
測量図の有無は宅地への地目変更時に地積に影響する
住宅などを建てるにあたって、宅地以外から宅地への地目変更をするとき、地積は小数点以下も表示されることになります。
そこで、法務局に備え付けられている図面をもとに、123㎡→123.45㎡というように、地積を変更します。
法務局に備え付けられていない図面は手続きを経ないと根拠として使えません。
法務局に備え付けられている図面がない場合は、123㎡→123.00㎡というように、小数点以下にはゼロをつけて地積を変更します。
登記簿上は、②地目と③地積が一度に変更されることになるので、原因及びその日付欄は「②③ ○年○月○日地目変更」と記録されます。
登記面積と実際とが一致・不一致となる原因
出典:国土交通省 地籍調査・国土調査の歴史(地租改正)(一部加工)
以下の登記の登記面積は実際の面積と一致しています。
✔︎ 登記面積が実際と一致する登記
・ 平成17年3月法改正以降に分筆
・ 「○番から分筆」の記載
・ 「③錯誤」「③錯誤 地図作成」の記載
・ 「国土調査による成果」の記載
・ 「○年○月○日換地処分」の記載
昭和35年の法改正により、土地分筆登記・土地地積更正登記・土地表題登記等の申請時に地積測量図の提出が義務づけられました。
また平成17年の法改正で、分筆する元となる土地も測量が義務づけられました。
また、国土調査や土地区画整理事業で換地処分がおこなわれるときには、測量がかならずおこなわれます。
登記のタイミングや登記内容によって面積の一致・不一致がわかります。
登記面積と実際とが不一致となるのは以下の原因が考えられます。
✔ 登記面積が実際と違う原因
・ 測量技術の未発達
・ 縄伸び(地租を少なくする)
・ 縄縮み(土地売却額を高くする)
・ 土地の一部が水没・流出
「縄伸び」とは、かつて検地の際、税負担を軽減するために長めに目盛りをうった縄を使って、地積を小さめに測量したことに由来しています。
このように、登記面積(公簿面積とよばれる)と実際が一致しないことがよくあるものの、売買契約書に「土地については、公簿面積による売買とする」などと書いて、当事者が実測しないことに合意して売買することもあります。
水没・流出により土地の面積が変わってしまったときは、地積変更登記を申請します。
地積変更登記はレアケースです。
分筆と合筆
分合筆により登記の単位を変更する手続きについて、くわしく見ていきます。
まずは分筆から。
分筆の定義と権利関係
分筆とは、1筆の土地を複数の筆に分割することです。
平成17年の法改正により、分筆する土地のほか、分筆する元となる土地も測量が義務づけられました。
元の土地全体を測量するためには、元の土地全体の境界確認を隣地所有者とおこなうことになります。
(土地所在図及び地積測量図の作成単位)
第75条 土地所在図及び地積測量図は、一筆の土地ごとに作成しなければならない。
2 分筆の登記を申請する場合において提供する分筆後の土地の地積測量図は、分筆前の土地ごとに作成するものとする。
出典:不動産登記規則75条
分筆された土地は元の土地の権利関係とおなじであり、元の土地の権利関係が登記記録に転記されます。
そして、登記識別情報も元の土地のものが引き継がれ、新たに通知されることはありません。
分筆するときの表題部の登記
出典:盛岡地方法務局 土地・建物の地図・図面など(一部加工)
たとえば5番だった土地を分泌すると、元の土地は枝番をつけて5番1、分筆した土地は5番2とします。
枝番が49まであったときに、5番2が分筆されると、5番2と5番50とに分けられます。
以前は元の土地を5番のままにするやり方もあったようです。
元の土地の表題部では、地番がかわって面積が減ったことを反映するために、地番と地積を抹消して次の行にあたらしい地番と地積を記録し、原因及びその日付欄は「①③5番1、5番2に分筆」とします。
元の土地を測量してみて、地積があやまっていたときは、「③錯誤 ①③5番1、5番2に分筆」となります。
ただし、分筆前のただしい地積は地積測量図に表示されるだけです。
分筆された土地の表題部では、原因及びその日付欄に「5番から分筆」と記録します。
分筆残地の実測を免除されることがある
平成17年の改正までは、分筆前の土地の登記面積から、測量した分筆部分の面積を引き算する(残地求積とよばれる)方法で、元の土地の面積を計算していました。
改正後は、分筆する土地にくわえて元の土地も測量する(全筆求積とよばれる)方法で計算することが義務付けられましたが、例外規定もさだめられました。
第72条 分筆の登記を申請する場合において、分筆前の地積と分筆後の地積の差が、分筆前の地積を基準にして規則第77条第5項の規定による地積測量図の誤差の限度内であるときは、地積に関する更正の登記の申請を要しない。
2 分筆の登記を申請する場合において提供する分筆後の土地の地積測量図には、分筆前の土地が広大な土地であって、分筆後の土地の一方がわずかであるなど特別の事情があるときに限り、分筆後の土地のうち1筆の土地について規則第77条第1項第5号から第8号までに掲げる事項(同項第5号の地積を除く。)を記録することを便宜省略して差し支えない。
出典:不動産登記事務取扱手続準則72条
✔ 分筆残地実測を省略できるケース
・ 分筆部分の割合が誤差限度内
・ 広大な土地から分筆する土地がわずか
ちなみに、規則77条5項は10条4項を準用しており、市街地地域については(0.05+0.014√F)√F㎡、村落・農耕地域については(0.10+0.044√F)√F㎡、山林・原野地域については(0.50+0.144√F)√F㎡となっています。
Fは、一筆地の地積を㎡単位で示した数です。
分筆による権利部(甲区・乙区)の登記
分筆する元の土地は、乙区が変更されることがあります。
たとえば、抵当権が分筆前の土地1筆にのみ設定されていた場合は、共同担保目録が作られ、目録の番号が付記登記で追加されます。
分筆された土地は、登記官が元の土地の内容を職権で転写します。
✔ 分筆される土地の転写内容
・ 甲区の最新の所有権移転登記
・ 乙区の現に効力のある登記
ただし、都市計画道路の事業決定などで抵当権のついた土地の一部を買収されたときは抵当権がはずされ、元の土地の登記にその旨付記登記されます。
合筆の定義と権利関係
合筆(がっぴつ・ごうひつ)とは、複数の筆の土地を統合して、1筆にまとめることです。
たとえば5番1と5番6と10番とを合筆して5番1としたときは、合筆後の5番1についてあたらしい登記識別情報が通知されます。
ちなみに、あたらしい5番1の登記識別情報だけでなく、合筆前の5番1と5番6と10番の登記識別情報をあわせたものも有効です。
合筆の登記の制限
物理的・権利関係的な制限により、合筆できない組み合わせの土地があります。
(合筆の登記の制限)
第41条 次に掲げる合筆の登記は、することができない。
一 相互に接続していない土地の合筆の登記
二 地目又は地番区域が相互に異なる土地の合筆の登記
三 表題部所有者又は所有権の登記名義人が相互に異なる土地の合筆の登記
四 表題部所有者又は所有権の登記名義人が相互に持分を異にする土地の合筆の登記
五 所有権の登記がない土地と所有権の登記がある土地との合筆の登記
六 所有権の登記以外の権利に関する登記がある土地(権利に関する登記であって、合筆後の土地の登記記録に登記することができるものとして法務省令で定めるものがある土地を除く。)の合筆の登記
出典:不動産登記法41条
6号の権利に関する登記は、受付年月日、受付番号、登記原因及びその日付が同じ抵当権がそれぞれに設定されているときがあてはまります。
また、地役権も筆の一部に設定できるので、地役権のある土地とない土地を合筆できます。
合筆による表題部と権利部(甲区・乙区)の登記
合筆する筆のなかで一番若い地番の登記が残され、他の地番の登記は閉鎖されます。
たとえば5番1と5番6と10番とを合筆したときは、地番は5番1となります。
残される登記の表題部では、面積が増えたことを反映するために、地積を抹消して次の行にあたらしい地積を記録し、原因及びその日付欄は「③5番6、10番を合筆」とします。
合筆する土地を測量してみて、地積があやまっていたときは、「③錯誤」も併記されます。
甲区では、あたらしい順位番号で、登記の目的欄に「合併による所有権登記」と記録します。
抵当権の登記があるときは、登記官の職権で、乙区の登記の目的欄に「1番登記は合併後の土地の全部に関する」と付記登記されます。
残されない地番の登記の表題部は、所在・地番・地目・地積を抹消して、原因及びその日付欄には「5番1に合筆」、〔登記の日付〕として〔○年○月○日同日閉鎖〕 と記録します。
登記官の職権による分合筆
登記官も職権で一定の要件をみたすときに分合筆登記をおこないます。
(分筆又は合筆の登記)
第39条 分筆又は合筆の登記は、表題部所有者又は所有権の登記名義人以外の者は、申請することができない。
2 登記官は、前項の申請がない場合であっても、一筆の土地の一部が別の地目となり、又は地番区域(地番区域でない字を含む。第四十一条第二号において同じ。)を異にするに至ったときは、職権で、その土地の分筆の登記をしなければならない。
3 登記官は、第一項の申請がない場合であっても、第十四条第一項の地図を作成するため必要があると認めるときは、第一項に規定する表題部所有者又は所有権の登記名義人の異議がないときに限り、職権で、分筆又は合筆の登記をすることができる。
分合筆の職権登記がおこなわれる代表的なものとしては、国土調査(国調とよばれる)があります。
国調のなかの地籍調査は、1筆ごと所有者の立会いのもと地番、地目、境界を確認しつつ測量し、測量図は法務局に備え付けられます。
(国土調査の成果の写しの送付等)
第20条 国土交通大臣、事業所管大臣又は都道府県知事は、前条第二項の規定により国土調査の成果を認証した場合又は同条第五項の規定により指定をした場合においては、地籍調査にあつては当該調査に係る土地の登記の事務をつかさどる登記所に、その他の国土調査にあつては政令で定める台帳を備える者に、それぞれ当該国土調査の成果の写しを送付しなければならない。
2 登記所又は前項の台帳を備える者は、政令で定めるところにより、同項の規定により送付された国土調査の成果の写しに基づいて、土地の表示に関する登記及び所有権の登記名義人の氏名若しくは名称若しくは住所についての変更の登記若しくは更正の登記をし、又は同項の台帳の記載を改めなければならない。
3 前項の場合において、地籍調査が第三十二条の規定により行われたときは、登記所は、その国土調査の成果の写しに基づいて分筆又は合筆の登記をしなければならない。
国調による職権登記がおこなわれたときは、表題部の原因及びその日付欄に変更内容と「国土調査の成果」の文言、〔登記の日付〕を記録します。
土地区画整理と登記
土地区画整理事業とは、法に基づいて道路や公園などの公共施設を整備・改善しつつ、土地の区画を整えて宅地の利用の増進をはかっていく事業です。
(市街地開発事業)
第12条 都市計画区域については、都市計画に、次に掲げる事業を定めることができる。
一 土地区画整理法(昭和二十九年法律第百十九号)による土地区画整理事業
二 新住宅市街地開発法(昭和三十八年法律第百三十四号)による新住宅市街地開発事業
三 首都圏の近郊整備地帯及び都市開発区域の整備に関する法律(昭和三十三年法律第九十八号)による工業団地造成事業又は近畿圏の近郊整備区域及び都市開発区域の整備及び開発に関する法律(昭和三十九年法律第百四十五号)による工業団地造成事業
四 都市再開発法による市街地再開発事業
五 新都市基盤整備法(昭和四十七年法律第八十六号)による新都市基盤整備事業
六 大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法による住宅街区整備事業
七 密集市街地整備法による防災街区整備事業
出典:都市計画法12条(2項から6項は省略)
都市の開発には7つの事業がさだめられており、圧倒的に多いのが土地区画整理事業です。
住宅街区整備事業は少なく、新都市基盤整備事業はまだありません。
建物の表題部について説明する記事で、市街地再開発事業については説明します。
土地区画整理による換地処分
土地区画整理事業では、道路の拡幅や公園などの公共施設のために土地を捻出する公共減歩や、売却して事業費の一部とするための保留地を捻出する保留地減歩がおこなわれ、宅地の面積がちいさくなります。
一方、宅地そのものは整形地となって、単価があがるので、事業地の土地所有者に対しては清算金で調整しながら従前と同じ価値の土地があたえられるようにします。
従前地単価 × 従前地面積 = 換地単価 × 換地面積 ± 清算金
従前地面積に対する減歩の割合を減歩率といい、100㎡から80㎡に減少したときは減歩率20%となります。
事業開始から換地処分とよばれる登記上の手続きまでには、長い時間を要します。
事業地の所有者には、仮換地を指定してつかわせますが、通常は仮換地がそのまま本換地となるので、所有者は仮換地に建物を建てることができます。
区画整理による登記上のパターン
区画整理がおわり宅地整備工事がなされると、登記においても換地処分といって新しい換地へと登記内容を書きかえる手続きがとられます。
✔ 換地処分の変化のパターン
・ 1筆の従前地に1個の換地を定める
・ 1筆の従前地に複数の換地を定める
・ 複数の従前地に1個の換地を定める
・ 従前地に換地を定めない
・ あらたに保留地をつくる
複数の従前地に対して1個の換地をさだめることは合筆に類似しており、合筆の登記の制限のうち物理的なもの以外の制限は換地処分にもあてはまります。
1筆の従前地に対して複数の換地をさだめることは分筆に類似します。
換地処分の登記(表題部・甲区・乙区)
従前地と換地とでは表題部に大きな変更がおこなわれます。
✔ 従前地と換地の表題部の変更点
・ 新しい町名などによる所在
・ 新しい地番
・ 宅地以外から宅地に地目変更
・ 減歩による地積変更
一方、変わらないのが、従前地の登記簿をもちいてこれらの変更がなされるというところです。
1筆の従前地に1個の換地を定めるときは、表題部だけ変わり、行を足して新たな所在、地番、地目、地積を記録し、原因及びその日付欄は「○年○月○日土地区画整理法による換地処分」とします。
1筆の従前地に複数の換地を定めるときは、1つ目は従前地の登記を変更するとともに原因及びその日付欄で「他の換地○市○○丁目○番○」を併記します。
2つ目以降はあたらしく登記をつくり、原因及びその日付欄にて「○年○月○日土地区画整理法による換地処分」と「他の換地○市○○丁目○番○」とが併記されます。
甲区や乙区には、分筆とおなじように所有権移転登記や抵当権設定登記が転写されます。
複数の従前地に1個の換地を定めるときは、残される登記表題部の原因及びその日付欄にて「○年○月○日土地区画整理法による換地処分」と「他の従前の土地○番○、○番○」とが併記されます。
また、甲区の登記の目的欄は「土地区画整理法による換地処分による所有権登記」として、受付年月日・受付番号や、権利者その他の事項欄に所有者の情報を記録します。
換地登記につかわれない土地登記は所在、地番、地目、地積を抹消し、閉鎖されます。
不換地・保留地の登記
従前地の面積がちいさいと、減歩で使いづらい土地となってしまうため、土地所有者の申し出により換地せず清算金を支払うことがあり、不換地として登記は閉鎖されます。
保留地はあたらしく登記がつくられ、原因及びその日付欄に「○年○月○日土地区画整理法による換地処分」、表題部所有者は土地区画整理事業の施工者がかかれます。
筆界特定制度
土地は連続していて切れ目がないため、所有したり使ったりするためには人為的に境目をもうける必要があります。
✔ 土地の境界の種類
・ 所有権界:所有している土地の境
・ 筆界:1筆ごとの土地の境
土地の境界には以上の2種類があり、所有権界は時の経過とともにゆれうごきます。
✔ 所有権界の変動の原因
・ 関係当事者の合意による境目の変更
・ 土地の一部を時効取得
しかし、実際にはほとんどの所有権界と筆界とが一致しており、同一視されています。
筆界と筆界特定の定義と特徴
出典:政府広報オンライン
不動産登記法で筆界と筆界特定の定義がさだめられています。
(定義)
第123条 この章において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 筆界 表題登記がある一筆の土地(以下単に「一筆の土地」という。)とこれに隣接する他の土地(表題登記がない土地を含む。以下同じ。)との間において、当該一筆の土地が登記された時にその境を構成するものとされた二以上の点及びこれらを結ぶ直線をいう。
二 筆界特定 一筆の土地及びこれに隣接する他の土地について、この章の定めるところにより、筆界の現地における位置を特定すること(その位置を特定することができないときは、その位置の範囲を特定すること)をいう。
出典:不動産登記法123条(3号から5号は省略)
筆界は所有権界とちがって登記されたときにさだまり、登記上の手続きをふまなければ変更できません。
筆界特定制度とはこの筆界の実際の位置をはっきりさせるためにあります。
筆界特定制度による筆界特定のながれ
筆界特定制度は平成17年3月の法改正でつくられ、平成18年1月から運用されています。
(筆界特定の事務)
第124条 筆界特定の事務は、対象土地の所在地を管轄する法務局又は地方法務局がつかさどる。
出典:不動産登記法124条(2項は省略)
筆界特定は、位置関係のはっきりしない筆界について、土地所有者等が申請しておこなわれます。
(筆界特定の申請)
第131条 土地の所有権登記名義人等は、筆界特定登記官に対し、当該土地とこれに隣接する他の土地との筆界について、筆界特定の申請をすることができる。
出典:不動産登記法(2項から5項は省略)
申請がおこなわれると、筆界特定登記官が専門家に調査をさせます。
(筆界特定登記官)
第125条 筆界特定は、筆界特定登記官(登記官のうちから、法務局又は地方法務局の長が指定する者をいう。以下同じ。)が行う。
出典:不動産登記法125条
この専門家とは、土地家屋調査士などの筆界調査委員のことをさします。
(筆界調査委員)
第127条 法務局及び地方法務局に、筆界特定について必要な事実の調査を行い、筆界特定登記官に意見を提出させるため、筆界調査委員若干人を置く。
2 筆界調査委員は、前項の職務を行うのに必要な専門的知識及び経験を有する者のうちから、法務局又は地方法務局の長が任命する。
出典:不動産登記法127条(3項から5項は省略)
筆界調査委員は、実地調査、測量、関係者へのヒアリング、関係者から提出された資料の確認などをおこないます。
(筆界調査委員による事実の調査)
第135条 筆界調査委員は、前条第一項の規定による指定を受けたときは、対象土地又は関係土地その他の土地の測量又は実地調査をすること、筆界特定の申請人若しくは関係人又はその他の者からその知っている事実を聴取し又は資料の提出を求めることその他対象土地の筆界特定のために必要な事実の調査をすることができる。
出典:不動産登記法135条(2項は省略)
筆界調査委員は、筆界特定登記官に、調査結果を意見として提出します。
(筆界調査委員の意見の提出)
第142条 筆界調査委員は、第百四十条第一項の期日の後、対象土地の筆界特定のために必要な事実の調査を終了したときは、遅滞なく、筆界特定登記官に対し、対象土地の筆界特定についての意見を提出しなければならない。
筆界特定登記官は、筆界調査委員の意見をもとに、筆界を特定します。
(筆界特定)
第143条 筆界特定登記官は、前条の規定により筆界調査委員の意見が提出されたときは、その意見を踏まえ、登記記録、地図又は地図に準ずる図面及び登記簿の附属書類の内容、対象土地及び関係土地の地形、地目、面積及び形状並びに工作物、囲障又は境界標の有無その他の状況及びこれらの設置の経緯その他の事情を総合的に考慮して、対象土地の筆界特定をし、その結論及び理由の要旨を記載した筆界特定書を作成しなければならない。
出典:不動産登記法143条(2項、3項は省略)
筆界特定登記官のつくった筆界特定書の写しが申請者に交付され、公告されます。
(筆界特定の通知等)
第144条 筆界特定登記官は、筆界特定をしたときは、遅滞なく、筆界特定の申請人に対し、筆界特定書の写しを交付する方法(筆界特定書が電磁的記録をもって作成されているときは、法務省令で定める方法)により当該筆界特定書の内容を通知するとともに、法務省令で定めるところにより、筆界特定をした旨を公告し、かつ、関係人に通知しなければならない。
出典:不動産登記法144条(2項は省略)
この写しは、だれでも交付をうけることができます。
筆界特定にともない、地積更正登記がされるときは、原因及びその日付欄に「③錯誤、筆界特定」と記録します。
筆界特定は境界確定訴訟と比べて短期間で安価
「不動産Q&A」には筆界特定書の全体のイメージが掲載されています。
不動産登記Q&A(Amazon)
手続番号、対象土地(2個の土地が記載されます)、申請人、筆界調査委員の氏名、結論、事案の概要(背景など)、理由の要旨(申請人や関係人等の主張、資料や実地調査による事実、結論を支持する理由など)が記載されています。
筆界特定したものの隣地所有者が納得せず裁判外紛争解決手続き(ADR)がとられたり、境界確定訴訟などに発展したりすることもあります。
万能ではありません。
しかし、筆界特定制度は安価です。
筆界特定の手数料は、たとえば二千万円の土地であれば4,000円などと安価です。
筆界調査委員の測量や、資格者代理人に筆界特定手続きを依頼したときは依頼先への測量やその他手続きの費用が、数十万円程度かかりますが、必要経費です。
うまく利用して、スムーズに筆界を確認できるといいですね。
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