公図や測量図面は登記簿と同じく重要
登記簿を読み解くためには公図により位置関係を把握することが重要です。
また、地積測量図などの精緻な図面も読み解くことができると重宝します。
今回は公図やさまざまな図面を見るときのポイントを説明します。
不動産登記に関して参考とした書籍
不動産登記の本はたくさん出版されていますが、いずれも同じような内容となっていて、選ぶのに苦労された方もいらっしゃると思います。
このブログでは、私がお勧めする以下の著書の流れに沿って説明していきます。
わかりやすく解説されています。
公図から分かる情報は沢山ある
まず、公図について説明します。
公図とは、土地の境界や建物の位置関係を把握するための図面です。
公図の多くは不正確ですが、不動産調査において必要不可欠な存在です。
公図のルーツは明治時代の地租改正で作られた図面
公図のほとんどは、明治時代の地租改正のときに作られました。
そのあと、様々な制度において使われたり、作り直されたりしてきたため、公図には様々な呼び方があります。
✔️ 公図の呼び方の例
・ 字限図(あざぎりず)
・ 旧土地台帳附属地図
・ 地図に準ずる図面
・ 地図
それぞれの由来を説明します。
字限図(あざぎりず)
地租改正で地券制度のもと作られた図面は一筆限図、字限図、村限図の3種類があります。
公図は字(あざ)ごとに作られた字限図(あざぎりず)が元になっているので、字限図と呼ばれることがあります。
旧土地台帳附属地図
明治22年に地券制度は廃止され、新たに整備された土地台帳が課税台帳となりました。
公図は旧土地台帳施行細則2条1項に規定されたため、今でも旧土地台帳附属地図と呼ばれることがあります。
地図に準ずる図面
その後、シャウプ勧告に基づき、固定資産税は市町村が扱うことになったので、国の行政官署である税務署は土地台帳事務を行う必要がなくなりました。
そこで昭和25年以降、土地台帳や公図は税務署から法務局に移管されました。
公図は不動産登記法14条で規定され、地図に準ずる図面と呼ばれることになりました。
地図が整備されると地図に準ずる図面は非公開となる
法務局に備え付けられた地図は、ほかの地図と区別するために、14条地図と呼ばれます。
(地図等)
第14条 登記所には、地図及び建物所在図を備え付けるものとする。
4 第一項の規定にかかわらず、登記所には、同項の規定により地図が備え付けられるまでの間、これに代えて、地図に準ずる図面を備え付けることができる。
6 第一項の地図及び建物所在図並びに第四項の地図に準ずる図面は、電磁的記録に記録することができる。
出典:不動産登記法14条(1項、4項、6項)
一定の要件を満たす正確な図面が、14条地図として扱われます。
✔️ 14条地図として扱われる図面の例
・ 国土調査による地籍図
・ 土地改良法による土地所在図
・ 市街地開発事業による土地所在図
・ 法務局が作成した地図
ちなみに、公図という言葉は法律用語ではなく、この14条地図を含めないで定義されるときがあります。
ここでは地図と地図に準ずる図面を指して公図と呼ぶことにしています。
地籍図
国土調査は、国土調査法等に基づいて昭和26年から実施されています。
国土調査の1つとしておこなわれている地籍調査は、主に市町村が主体となって、一筆ごとの土地の所有者、地番、地目を調査し、境界の位置と面積を測量する調査です。
この地籍調査による成果図面のことを地籍図といい、14条地図としてつかわれている図面のほとんどは、この地籍図となっています。
ちなみに、当初の地籍図の精度は14条地図の要件を満たしておらず、地図に準ずる図面として位置づけられています。
精度のよい地籍図は14条地図、それ以外の地籍図は公図に多く使われています。
地図番号
登記簿にのっている土地について、14条地図がつくられて、法務局に備え付けられているときは、地図の番号が記録されます。
不動産登記法14条4項に基づき、暫定的な図面が「地図に準ずる図面」として公開されていた土地において、14条地図が整備されたときには、「地図に準ずる図面」は公開対象から外されます。
地図に準ずる図面は方位・縮尺・形状について信頼性に欠ける
地図に準ずる図面は、方位、角度、縮尺、距離、面積などの定量的なものについて、あまり正確とは言えません。
明治初期にまでさかのぼるような古い字図が作成された当時は、測量技術が未熟であったため、一般的な字図(公図)の性格として、配列、曲がり具合、地形的特徴等の定性的な事項については比較的正確に記載されているが、距離、角度、面積等の定量的事項については必ずしもそうではなく
出典:平成14年6月27日福岡高等裁判所 平成9年(ネ)第785号境界確定請求控訴事件判決
一方で、配列などの位置関係、曲がり具合、地形的特徴などの定性的なものについては比較的正確であり信頼できる資料となっています。
地図に準ずる図面は高い利用価値があります。
地図や地図に準ずる図面としてコンピューター出力された地籍図などの公図
出典:法務省 地図証明書及び各種図面証明書等のレイアウトの変更について 抜粋・加工(以下同様)
ここからは、地籍図などをベースとした公図(地図・地図に準ずる図面)の見方を説明します。
まず、地図証明書には、全体に紋様が入るほか、上の図のピンクの線で囲ったところに認証文と登記官の氏名および電子公印があります。
閲覧用図面にはこれらがありません。
地図や地図に準ずる図面のコンピューター出力範囲
地籍図は、緯度や経度にそって網目状に区切った範囲で1つの図面がつくられます。
コンピューターではこれらがつなげられて、請求した地番をまんなかに配置して表示されます。
公図内に縦や横の直線が引かれている場合は、複数の図面が接合されていることを示しています。
地図や地図に準ずる図面の地番の表示
地番は「○番○」ではなく「○-○」と図面上に表示されます。
図中に地番を書きこむスペースがないときは、図中にはイロハが振られ、12個までは左上のスペースに、それ以上あるときは次ページに表示されます。
イロハのうちヰやヱは使われず、ヒモセスの次にン、そのあとはイイ、イロ、イハ、と続きます。
地図や地図に準ずる図面の区域境の表示
公図では、筆界の線のほかに、区域の境を示す黒丸が並んでいる線も時折みられます。
黒丸が連続して並んでいる数によって、意味が違います。
区域境の表示 | 意味 |
黒丸が4つ | 市町村の境界 |
黒丸が3つ | 大字・町の境界 |
黒丸が2つ | 字・○丁目の境界 |
地図や地図に準ずる図面の下欄の記載事項
公図の下部には図面にまつわる情報が記載されます。
出力縮尺
中段の「出力縮尺」は、不動産登記規則10条2項の縮尺などにもとづいています。
(地図)
第10条
2 地図の縮尺は、次の各号に掲げる地域にあっては、当該各号に定める縮尺によるものとする。ただし、土地の状況その他の事情により、当該縮尺によることが適当でない場合は、この限りでない。
一 市街地地域(主に宅地が占める地域及びその周辺の地域をいう。以下同じ。) 250分の1又は500分の1
二 村落・農耕地域(主に田、畑又は塩田が占める地域及びその周辺の地域をいう。以下同じ。) 500分の1又は1000分の1
三 山林・原野地域(主に山林、牧場又は原野が占める地域及びその周辺の地域をいう。以下同じ。) 1000分の1又は2500分の1
出典:不動産登記規則10条2項
また、「分類」が地図に準ずる図面で、「種類」が旧土地台帳附属地図となっている公図は1間(けん)を1分(ぶ)に縮小して尺貫法で作図されているため、縮尺は600分の1となります。
1間=6尺=60寸=600分です。
精度区分
右隣の「精度区分」は、土地の属する地域ごとに定められています。
(地図)
第10条
4 地図を作成するための一筆地測量及び地積測定における誤差の限度は、次によるものとする。
一 市街地地域については、国土調査法施行令(昭和二十七年政令第五十九号)別表第四に掲げる精度区分(以下「精度区分」という。)甲二まで
二 村落・農耕地域については、精度区分乙一まで
三 山林・原野地域については、精度区分乙三まで
出典:不動産登記規則10条4項
規則10条の参照する国土調査法施行令別表4は以下のとおりです。
座標系番号又は記号
出典:K’z lab 抜粋・加工
よくつかわれる座標系には、地球を曲面でとらえた緯度経度座標系と、地面を平面でとらえたXY座標系とがあります。
XY座標系の一種である平面直角座標系にもとづいて、日本を19の地区に分割した「座標系番号又は記号」と、公図の右上にあるXY座標とを合わせると、特定の場所を表すことができます。
緯度・経度に変換して、Googleマップなどで場所を特定することもできます。
ただし、「座標系番号又は記号」やXY座標は、14条地図や一部の地図に準ずる図面にのみ記載されていて、旧土地台帳附属地図などには記載されていません。
作成年月日
「作成年月日」は図面が作成された日付が記載されます。不明の場合は斜線が引かれます。
備付年月日
「備付年月日」は図面の原図が法務局に備え付けられた日付です。不明な場合は斜線が引かれます。
補記事項
「補記事項」については、通常は斜線が引かれ、補記が必要な場合は記載がされます。
複数の字限図から作られた地図に準ずる図面には接続不一致の表示がある
出典:大阪法務局 登記所備付地図作成作業とは? を加工
いくつかの字限図が1つのマイラー図面にまとめられて、現在の公図に用いられていることがあります。
字限図は精度がわるく、マイラー図面上ではぴったりと一致させることはできないので、少し離してならべられ、空白部分に「接続不一致」と表示されています。
メガネ地は1筆の土地が分断されている
山林などでは、1筆の土地を道路や水路が分断して、2区画の土地にわかれていることがあります。
それぞれの区画に〇印をつけ、道路などをまたいで弧線∩で結び、弧の向きにそって地番がかかれている四角内の部分をメガネ印、分断された土地をメガネ地と呼びます。
地籍調査で筆界が確認できなかった土地(筆界未定地・現地確認不能地)
地籍調査で筆界確定のために土地所有者の立会がえられなかったり、筆界について争いがあったり、現状を確認できなかったりする場合、地籍図にそのことがあらわされて、公図や土地の登記の表題部にも反映されます。
筆界未定地
従前の公図に筆界の線があったとしても、地籍調査で筆界未定地とされると、確定していない筆界の線が消され、それぞれの地番が+記号でつなげて表示されます。
土地の登記の表題部にある「地図番号」の欄には、筆界未定地と表示されます。
現地確認不能
地籍調査をおこなっても、国道・県道・市区町村道の一部となっている土地などで筆界をはっきりと確認できない場合は現地確認不能地とされます。
土地の登記の表題部にある「地図番号」の欄に現地確認不能と表示されます。
各種図面の見方
これまでに、14条地図と地図に準ずる図面について見てきましたが、その他にも不動産登記に関連する図面がいくつかあります。
✔ 登記簿に関連する図面
・ 登記所備付地図(14条地図)
・ 地図に準ずる図面
・ 建物所在図
・ 地積測量図・土地所在図
・ 実測図・境界確認測量図
・ 建物図面・各階平面図
・ 地役権図面
建物所在図以下、順に見ていきます。
建物所在図が整備されている地域は少ない
不動産登記法14条では、地図以外にも備え付けるべき図面として建物所在図が定められています。
(地図等)
第14条 登記所には、地図及び建物所在図を備え付けるものとする。
3 第一項の建物所在図は、一個又は二個以上の建物ごとに作成し、各建物の位置及び家屋番号を表示するものとする。
出典:不動産登記法14条1項・3項
建物所在図とは、地図上に建物の位置と家屋番号がかかれたもので、整備されている地域はまだあまりありません。
地積測量図と土地所在図は同一図面上に作られることが多い
土地所在図と地積測量図の作られ方については、不動産登記規則に概要がさだめられています。
(土地所在図及び地積測量図の作成単位)
第75条 土地所在図及び地積測量図は、一筆の土地ごとに作成しなければならない。
2 分筆の登記を申請する場合において提供する分筆後の土地の地積測量図は、分筆前の土地ごとに作成するものとする。
出典:不動産登記規則75条
地積測量図
地積測量図は、1筆から数筆の土地の地積を法的に確定した図面です。
自治体から土地の払い下げをうけて表題登記を申請したり、地積を更正したり、分筆したりする際には、地積測量図を添付する必要があります。
✔︎ 地積測量図の作成を要する例
・ 土地の表題登記
・ 地積更正登記
・ 分筆登記
登記申請に添付する地積測量図はサイズや盛り込む内容が決められています。
(地積測量図の内容)
第77条 地積測量図には、次に掲げる事項を記録しなければならない。
一 地番区域の名称
二 方位
三 縮尺
四 地番(隣接地の地番を含む。)
五 地積及びその求積方法
六 筆界点間の距離
七 国土調査法施行令第二条第一項第一号に規定する平面直角座標系の番号又は記号
八 基本三角点等に基づく測量の成果による筆界点の座標値
九 境界標(筆界点にある永続性のある石杭又は金属標その他これに類する標識をいう。以下同じ。)があるときは、当該境界標の表示
十 測量の年月日
出典:不動産登記規則77条1項
その他、左下には作成者の署名または記名と押印、作成年月日を書き、右下には申請人の記名をします。
平成17年3月の法改正で、分筆するときの地積測量図は分筆する元の筆も測量して表示することになりました。
また、境界標の種類も表示されるようになって、現地で確認しやすくなりました。
土地所在図
土地所在図とは、1筆から数筆の土地の法的な所在を示す図面です。
土地所在図は、14条地図や地図に準ずる図面の筆界を引きなおす作業で参照しやすいように、14条地図と同じ縮尺でつくられます。
(土地所在図の内容)
第76条 土地所在図には、方位、縮尺、土地の形状及び隣地の地番を記録しなければならない。
2 土地所在図は、近傍類似の土地についての法第十四条第一項の地図と同一の縮尺により作成するものとする。
3 第十条第四項の規定は、土地所在図について準用する。
出典:不動産登記規則76条
しかし、地積測量図が土地所在図を兼ねることもできますし、地積測量図の用紙の余白に作成することもできます。
(土地所在図及び地積測量図の作成方法)
第51条
2 規則第73条第1項の規定により作成された地積測量図は、土地所在図を兼ねることができる。
3 規則第74条第3項に規定する用紙により地積測量図を作成する場合において、当該用紙に余白があるときは、便宜、その余白を用いて土地所在図を作成することができる。この場合には、図面の標記に「土地所在図」と追記するものとする。
出典:不動産登記事務取扱手続準則51条
地積測量図が土地所在図を兼ねるときは、「土地所在図兼地積測量図」と記載されます。
「兼」がなくて単に上下に併記されることも。
地積測量図のもととなる測量図である境界確認測量図
境界確認測量図(上の図では「境界確定図」)は、登記申請に使うことができる境界に関する図面の1つで、境界確定測量により作られます。
境界標の種類や座標、隣地所有者の記名押印欄があるため、A2などの大きなサイズとなります。
✔ 境界確認測量図の特徴
・ 境界確定状況を確認できる図面
・ 土地家屋調査士等による高精度な図面
隣地所有者が立会いのもと境界確認して合意したことをあらわす署名・記名と押印をして、測量対象範囲の境界を明確にしています。
この署名・記名と押印を筆界確認書上でおこない、実測図などを添付することでも、境界確認測量図と同じ効果をもたせることができます。
実測図だけでは境界の確定状況を確認できません。
境界確認測量図や筆界確認書に添付された精緻な測量図をもとに、さだめられた様式で、地積測量図がつくられます。
建物の位置や形をあらわす建物図面・各階平面図
出典:盛岡地方法務局(土地・建物の地図・図面など)建物図面サンプル を加工
いわゆる建物図面は、こまかく見ると建物図面と各階平面図とで構成されています。
「建物図面」は、建物の1階部分の形状や、敷地との位置関係を示した図面、「各階平面図」は各階の形状や、床面積および求積方法を示した図面です。
建物にフォーカスしている図面であり、土地の形状や建物の敷地となる範囲については不正確である可能性があります。
✔︎ 建物図面の作成を要する例
・ 建物の表題登記
・ 床面積や構造の変更登記
建物図面は1個の建物ごとに作られます。
(建物図面及び各階平面図の作成単位)
第81条 建物図面及び各階平面図は、一個の建物(附属建物があるときは、主である建物と附属建物を合わせて一個の建物とする。)ごとに作成しなければならない。
出典:不動産登記規則81条
建物図面であらわす内容は以下のように定められています。
(建物図面の内容)
第82条 建物図面は、建物の敷地並びにその一階(区分建物にあっては、その地上の最低階)の位置及び形状を明確にするものでなければならない。
2 建物図面には、方位、縮尺、敷地の地番及びその形状、隣接地の地番並びに附属建物があるときは主である建物又は附属建物の別及び附属建物の符号を記録しなければならない。
3 建物図面は、五百分の一の縮尺により作成しなければならない。ただし、建物の状況その他の事情により当該縮尺によることが適当でないときは、この限りでない。
出典:不動産登記規則82条
冒頭の図や、上の区分建物の建物図面のように、建物図面には実線や点線で1階の形があらわされます。
(各階平面図の内容)
第83条 各階平面図には、縮尺、各階の別、各階の平面の形状、一階の位置、各階ごとの建物の周囲の長さ、床面積及びその求積方法並びに附属建物があるときは主である建物又は附属建物の別及び附属建物の符号を記録しなければならない。
2 各階平面図は、二百五十分の一の縮尺により作成しなければならない。ただし、建物の状況その他の事情により当該縮尺によることが適当でないときは、この限りでない。
各階平面図で1階以外の階をあらわすときには、点線で1階の形があらわされます。
建物図面と各階平面図の縮尺は、それぞれの右下に表示されます。
表題登記(建物表示登記)申請に建物図面の添付が必要となったのは昭和35年4月1日からで、それ以降に建築された建物については、原則として建物図面が作られています。
ただし、昭和40年前後までは、建物図面がない建物も見られます。
1筆の土地の一部に地役権が及ぶときに作られる地役権図面
出典:登記情報提供サービス 地役権図面見本 を加工
地役権は、土地の一部分について設定することができます。
地役権を土地の一部分に設定する場合は、その場所と範囲を明らかにするために地役権図面を添付して登記申請します。
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