特許調査の知識は知財を仕事で扱わない人にも必要
特許は、発明を世の中に公開するかわりに、一定期間その発明を独占できるようにする制度です。
公開された特許情報は技術とビジネスの情報の宝庫で、特許調査を理解することで、新しいサービスを考えるときや、他社の動きを知りたいときに役立てることができると思います。
今回は、特許調査の基本と概要について説明します。
特許調査に関して参考とした書籍
特許調査の本はたくさん出版されていますが、専門家向けのものも多く、選ぶのに苦労された方もいらっしゃると思います。
このブログでは、以下の著書の流れに沿って説明していきます。
無料のJ-PlatPatだけで調べる方法がわかるのでおすすめです。
この本は、次の4つの章で構成されています。
- 特許調査入門(第三版)の構成
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- 第1章 データベースと特許情報検索の基礎
- 第2章 特許調査の基本的なテクニック
- 第3章 特許調査の精度上げと調査実務の要諦
- 第4章 特許調査に役立つその他の情報源
操作をすぐに知りたい人は第2章からでもよいとされていますが、著者は第1章から順番に読むことをすすめています。
このブログでも、第1章の基礎から順番に進めます。
※ 本書のJ-PlatPatの説明は2019年5月の機能改善版にもとづいているため、このブログでは今の画面で確かめながら進めます。
特許制度とは

特許制度は、特許法にもとづいて運営されています。
以下、制度のおおまかな内容について説明します。
特許法第1条にさだめる特許制度の目的

第1条 この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。
出典:特許法1条
特許制度とは、発明をした人に一定期間の独占的な権利をあたえるかわりに、その発明の内容を公開してもらう制度のことをさします。
公開された発明は、誰でも読んで、次の研究や開発に生かすことができます。
発明者は権利で守られ、社会は技術を共有できるため、産業が発達していくしくみになっています。
※ ちなみに、発明の内容を公開するための文書は「公報」とよばれます。
※ また、特許の出願を受け付けて審査をおこなうところは「特許庁」です。
発明の定義(特許法)

特許制度では、発明が保護されます。
第2条 この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。
出典:特許法2条1項
特許法では発明を「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と定義しています。
そのため、計算方法や人の取り決めそのもの、ゲームのルールなどは、自然法則を利用していないので発明にあたりません。
ビジネスのしくみhは、コンピュータなどを使って実現すると、特許になることがあります。
特許に関連する法令(法律・政令・省令・審査基準)

特許制度においては、以下の法令などがさだめられています。
- 特許制度の法令と内容
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- 特許法:特許制度
- 特許法施行令:手続きの細目
- 特許法施行規則:書類の様式など
- 特許・実用新案審査基準:審査官が審査をおこなうときの基準
審査基準は法令ではありませんが、実務ではとても大切です。
特許権の効力と存続期間

第68条 特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する。(略)
出典:特許法68条
特許権をもつ人は、その発明を仕事として独占的に使うことができ、ほかの人が無断で使うことをやめさせることができます。
第67条 特許権の存続期間は、特許出願の日から二十年をもつて終了する。
出典:特許法67条1項
特許権は永久ではなく、原則として出願の日から20年で終わります。
期間が過ぎた発明は、誰でも自由に使えるようになります。
出願から登録までの流れ(出願公開・審査請求・登録)
特許は、出願しただけでは権利になりません。
- 出願から登録までの流れ
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- 出願
- 出願公開(出願から1年6か月)
- 審査請求(出願から3年以内)
- 審査
- 特許査定・登録
- 特許公報の発行
出願された内容は、審査の結果を待たずに、出願の日から1年6か月がたつと公開されます。
これを出願公開といいます。
審査は自動でははじまらず、出願の日から3年以内に審査請求をする必要があります。
審査請求をしないと、出願は取り下げたものとみなされます。
審査を経て特許査定となり、登録料を納めると特許権が発生し、特許公報にのります。
公開されている=権利になっている、ではありません。
特許データベース(J-PlatPat)

特許の公報は、特許庁所管の独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)が運営する「J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)」で、誰でも無料で検索・閲覧することができます。
登記簿を法務局で調べるように、特許はJ-PlatPatで調べます。
データベース検索の基礎

特許調査では、検索の結果を「漏れ」と「ノイズ」の2つの面から考えます。
- 検索結果をはかる2つのものさし
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- 再現率:探したい公報を、漏れなく拾えているか
- 適合率(精度):拾った公報のうち、関係のある公報がどれだけあるか
再現率を上げようとして条件を広げると、関係のない公報(ノイズ)もふえて、適合率が下がります。
反対に、条件をしぼって適合率を上げると、今度は漏れがふえます。
漏れを減らしつつ、件数をふやしすぎないことが大切です。
キーワード検索と分類検索

同じ技術でも、公報によって言葉の使い方はさまざまです。
たとえば、正式な名称、略称、英語、ひらがなとカタカナのちがいなど、言い回しがちがうとキーワード検索では漏れが出ます。
そこで役に立つのが、技術の内容に応じて公報につけられている分類です。
- 特許の分類の例
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- IPC(国際特許分類):世界共通の分類
- FI:IPCを日本向けにさらに細かくした分類
- Fターム:技術を目的や用途などのいろいろな観点から整理した、日本独自の分類
言葉の言い回しがちがっても、同じ分類がついていれば同じ技術分野として探せます。
キーワードと分類の組み合わせ方は、あとの記事でくわしく説明します。
特許情報と公報の読み方の基礎

J-PlatPatで調べられる特許情報には、公報そのものと、審査の経過をしめす情報とがあります。
特許に関する公報の種類

J-PlatPatでは、出願から登録までの段階に応じて、さまざまな公報を見ることができます。
- 特許に関する公報の例
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- 公開特許公報(特開)
- 公表特許公報(特表)
- 特許公報(特許)
公開特許公報は、出願公開のときに発行される公報です。審査の前なので、権利になっていないものも含まれます。
公表特許公報は、外国語で国際出願(PCT出願)されたものが日本に入ってきたときに、その翻訳文を公開する公報です。
特許公報は、審査を経て登録され、特許権が発生したものを掲載する公報です。
番号の頭の「特開」「特許」を見れば、どの段階の公報かわかります。
経過情報(審査の経過と権利の状態)

公報は発行されたときの内容なので、その後どうなったかまではわかりません。
審査請求がされたか、拒絶されたか、特許になったあとも権利が続いているか(特許料が納められているか)などは、J-PlatPatの経過情報で確かめます。
検索結果一覧の右側にある経過情報を押下して今の状態を確かめます。
公報の様式(書誌事項、特許請求の範囲、明細書、図面)
公報の内容をくわしくみていく前に、公報の様式を確認しましょう。

公報の最初の部分は書誌事項とよばれ、出願番号、出願日、出願人、発明者、分類などがのっています。

特許請求の範囲には、権利として求める発明の内容が、請求項ごとにしるされています。
第70条 特許発明の技術的範囲は、願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない。
出典:特許法70条1項
権利の範囲を決めるのは、特許請求の範囲です。
明細書には、発明の背景、課題、解決手段、実施の形態など、発明の中身がくわしく説明されています。

図面は、明細書の説明を補うための図です。
特許調査の種類

ひとくちに特許調査といっても、目的によって探すものも、調べる範囲もちがいます。
- 特許調査の代表的な種類
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- 先行技術調査
- 侵害予防調査
- 無効資料調査
- 技術動向調査
それぞれ、かんたんに説明します。
先行技術調査は、出願する前に、同じような発明がすでに出ていないかを確かめる調査です。似たものがあると、新しさがないとして特許になりません。
侵害予防調査は、製品やサービスを開発・発売する前に、他社の特許権を侵害していないかを確かめる調査です。
無効資料調査は、問題になっている他社の特許について、出願より前の資料を探して、無効にできないかを調べる調査です。
技術動向調査は、どの会社がどんな分野に出願しているかを調べて、技術や競合の流れをつかむ調査です。
最初に「何のために調べるのか」を決めることが大切です。
※ 調べる範囲は、先行技術調査や無効資料調査では公開・登録をとわず世界中の文献、侵害予防調査では主に権利が生きている特許や審査中の出願と、目的によって変わります。
特許出願で日本一のソフトバンク

ソフトバンクを知らない人はいないと思いますが、特許の世界でいま一番目立っている会社であることは、あまり知られていないかもしれません。
ソフトバンクグループの出願公開件数
特許情報サイトIP Forceの集計によると、2026年の出願公開件数で、ソフトバンクグループ株式会社は1位の22,251件です。前年の2025年も1位で、10,400件でした。
※ 2026年8月時点の集計で、筆頭出願人の出願のみを数えています。
トヨタ自動車やキヤノンといった、特許の常連企業を大きく上回っています。
ケタがちがいます。
大量出願のきっかけ
きっかけは2023年です。
孫正義さんは、同年10月のSoftBank World 2023で、グループ全体で生成AI関連の特許を数か月のうちに1万件以上出願したこと、さらに個人としても1,000件を超える見込みであることを話したと報じられています。
孫さんは生成AIとの対話を通じて発明を考えたとされ、日本経済新聞は孫さんの出願を分析し、自動運転や物流に関心が向いていると伝えています。
出願公開と特許登録とのちがい
一方で、同じ集計で2026年に特許として登録された件数は201件(74位)です。
出願公開の多さに比べると、権利になったものはまだごく一部です。
さきほどの、公開されている=権利になっている、ではない、の具体例です。
「ソフトバンク」という出願人はひとつではない
通信会社のソフトバンク株式会社は、ソフトバンクグループとは別の出願人です。
冷却システム、二次電池、無線電力伝送、捜索支援など、幅広い分野で特許を取っています。
「ソフトバンク」で検索したとき、どの会社の出願が出てきて、どれが漏れるのか。
次回は、J-PlatPatで実際に出願人を検索して確かめてみます。
参考:IP Force ソフトバンクグループ株式会社 2026年の出願公開
※ この記事は個人の学習記録であり、所属する組織の見解ではありません。
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