虹色にかがやく!ソウルで親子の螺鈿づくり
先日、娘とソウルへ行ってきました。
旅の目的のひとつが、韓国の伝統工芸、螺鈿(らでん)の体験です。
乳白色だった貝が、黒い土台の上で虹色に光りはじめる瞬間を、目撃することになりました。
螺鈿ってなに?ナジョンチルギとの出会い
螺鈿は、貝の内側のかがやく部分を薄く切って、漆にはめ込む装飾です。
韓国語ではナジョンチルギ(나전칠기)と呼ばれます。
まずは、体験した工房のようすからご紹介します。
工房はマンションの一角にありました

予約した工房は、マンションのような建物の一室にありました。
部屋には螺鈿の屏風がかざられ、作業用のテーブルにも螺鈿がほどこされていました。
その作業テーブルの上に置かれたいくつかの白いトレーには、厚み0.1mmほどに薄く加工され、いろいろな形にカットされた貝が、たくさんのっていました。
屏風のきらめきに親子でうっとりしました。
「ナジョンチルギ」ってどういう意味?

テーブルには、先生の作った見本もいくつか並んでいました。
ナジョンチルギは、貝を意味するナジョン(螺鈿)と、漆(うるし)を意味するチル、器(うつわ)を意味するギ、という3つの言葉が合わさってできています。
- ナジョンチルギの言葉の意味を分解
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- ナジョン(나전)=貝の内がわの光る部分で、英語だとmother-of-pearl
- チル(칠)=漆(うるし)のことで、韓国では「オッチル」と呼ぶ
- ギ(기)=うつわ
漆は虫や水に強いから、家具や器のコーティングに使われます。
いよいよ体験スタート!図案から貝ならべまで
今回は、娘がキーホルダー、私が髪ゴムをつくりました。
紙の上で貝を並べて、図案を考えて、レジン液をのりがわりにして、少しずつ貝を貼っていきました。
伝統的な螺鈿は漆を使いますが、体験ではあつかいやすいレジンを使いました。
型をうつして、まずは仮置き

土台の形を写しとる
最初に先生が、作品の土台となる黒いプラスチックを黒い紙の上に置き、ボールペンで、土台のまわりをなぞって形を写しとりました。
パーツを仮置き
つぎに、私と娘で、トレーの中から、使いたいメインのパーツを選びます。
黒い紙に描かれたボールペンのラインの中に、それらのパーツをいったん仮置きすることで、どんな絵にするかイメージをふくらませました。
娘は水辺を飛ぶ鳥と花と月、私は月を追いかける2羽のうさぎにしました。
黒い紙の上でならべてみると、アイデアがわいてくる。
乳白色の貝が、黒い土台でパッと虹色に

貝を、黒い土台に移していく
私たちが仮置きしながら構成を考えている間に、先生は、黒いプラスチックの土台の上に、レジンを薄く塗りました。
私たちは、黒い紙の上に並べられたパーツを、その土台にピンセットをつかって移していきます。
つぎに竹ひごの先に少しだけレジンをつけて、細かく砕いた貝をくっつけます。
そうやってすき間を埋めて、貝のモザイクを少しずつ配置していきました。
黒地にのせた瞬間、虹色に
白いトレーに並べられた貝のパーツは、どれも淡いベージュや乳白色でした。
ところが、その貝を黒い土台に貼ったとたん、ピンクや黄色や緑の虹色にかがやきだしたのには、おどろかされました。
ピンクとかに光る!
真珠層はうすい層の重なりで光をはね返して虹色になります。
裏が黒いと虹色がくっきり見えます。
「もっと細かく」先生のひとこと

先生からのアドバイス
最初、私は大きめのかけらばかりを貼っていました。
すると先生がスマホに何かをつぶやき、画面を見せてくれます。
そこには日本語に翻訳された「もっと細かいかけらを使って」というメッセージが表示されていました。
大きいパーツを、小さいパーツで囲む
大きなパーツのまわりを、細かいかけらでぎっしり囲むと、主役の大きなパーツがぐっと浮き立ちます。
なるほど、と納得した私は、娘にもそのコツを伝えました。
作品がプロっぽくなりました。
そこからは、親子でひたすら黙々。
細かく砕いた貝で、面をていねいに埋めていきます。
気づけば、おしゃべりも忘れて集中していました。
完成!世界にひとつの螺鈿こもの
土台の上に並べ終わったら、先生が上に薄くレジンを重ねてからUVライトで硬化させて完成。
先生は、出来上がった作品を、貝殻を飾ったスペースに置きました。
SNSに使えるように、先生が写真映えする場所を用意してくれていたのです。
親子で記念さつえいをして、体験はおしまいになりました。
娘は鳥と月、私はうさぎと月

娘のキーホルダーは、水辺を飛ぶ鳥と、花と、月。
私の髪ゴムは、月を追いかける2羽のうさぎです。
乳白色の貝が黒地の上でやわらかく光り、想像以上に美しい仕上がりになりました。
これ、本当に私が作ったやつ!?
改めて作品を見た2人は貝の美しさに息を飲みました。

記念写真には、いろいろな貝も一緒に飾られていました。
右下の、ふちに穴がならんだ大きな貝がアワビです。
左上の、トゲトゲした大きな巻貝がサザエで、これも螺鈿に使える貝なのだそうです。
こまかくて大変だったけど、たのしかった。
7歳の娘と体験して感じたこと・予約の内容について
以下、今回の体験の概要をまとめます。
- 体験して感じたことと予約の内容
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- 細かい作業が続き、所要時間はおよそ1時間半
- 集中力のある時間帯(午前や昼すぎ)がおすすめ
- レジンは素手でふれないように注意
- 先生とは英語や翻訳アプリでやりとり
- 人気の工房は、旅程が決まったら早めの予約を
私たちは今回KlookからHwiho Craftという合井エリアにある工房を予約しました。
今回は娘のキーホルダー+私の髪ゴムで、ぜんぶで約9,548円でした。
料金は作るもので変わります。
ちょっと深掘り★螺鈿の貝と歴史のはなし
ここからは、体験のあとで娘と調べた背景を少しだけ。
むずかしい話は短めに、写真や地図と一緒にご紹介します。
貝の種類で、螺鈿の色が変わる

今回は、真珠層のある貝を薄くけずって使う「薄貝(うすがい)」とよばれる螺鈿細工を体験しました。
じつは、薄貝の螺鈿に使うことができる貝にはいろいろな種類があります。
そして、どの貝を選ぶかで、光り方や色がぐっと変わります。
同じ貝でも、種類によって色がちがう。
今回の貝の種類は特定できなかった
今回使った貝が、どの種類だったのかは、特定できませんでした。
作業場には英語で「mother-of-pearl(貝の内がわの光る部分)」と書かれた紙がしいてあり、トレーの貝はどれも白っぽい色でした。
アワビか白蝶貝だと思われます。
おまけ|家に帰って、貝を削ってみた
楽しい体験のあと、家に帰ってからも、いろいろな貝を取りよせてみました。
そして、耐水サンドペーパー(120番)で、貝の外がわを削ってみました。
すると、貝によって「削りやすさ」がまるでちがうことに気づきました。
アワビは硬くてけずるのに20分

まずはアワビ。

外がわがとても固く、20分ほどかけて、ようやく内がわの真珠層が見えてきました。

根気のいる作業でしたが、あらわれた虹色は、とてもきれいでした。
白蝶貝は柔らかくて手ではがせる

いっぽう、白蝶貝(しろちょうがい)は、まるでちがいました。

層がはがれやすく、手でぱきぱきと薄い層をはがせます。

剥がすのはかんたんですが、もろいので、細かい作業は大変そうです。
こまかい粉が舞うから、耐水のサンドペーパーを使って、水中で作業しよう。
海の地理のはなし

貝は、生きられる海水温が決まっています。
螺鈿に使われるアワビのなかまは、日本や朝鮮半島のまわりの、すこし冷たい温帯の海でよくとれます。
だから韓国の職人さんは、朝鮮半島の海で豊富にとれるアワビを限界まで薄く削る「薄貝」の技を発展させたと考えられます。
海の地理が、そのまま工芸の特徴を決めていたのです。
韓国の螺鈿の歴史|新羅から現代まで

韓国の螺鈿は、統一新羅の時代に唐(中国)から伝わったとされています。
その後、高麗(こうらい)時代に黄金期をむかえました。
菊などの唐草模様を、薄い貝で細かく散らした経箱などが、いまも残る名品です。
つづく朝鮮(李朝)時代には、やや厚めの貝で、大きく大胆な文様が好まれました。
そして現代も、ソウルの仁寺洞(インサドン)などに工房があり、技は受けつがれています。
私たちが体験したのも、その長い歴史の、いちばん新しい1ページというわけです。
歴史的な作品をもっとみてみたくなりました。
日本の螺鈿は?|韓国と対をなす歴史

日本にも、螺鈿の長い歴史があります。
おもしろいのは、韓国とは使う貝が少しちがうことです。
韓国が「アワビの薄貝」を一本道で極めたのに対し、日本は2つの道を歩みました。
ひとつは、アワビやトコブシの薄貝を使う「青貝(あおがい)細工」。
富山県の高岡漆器などが知られています。

もうひとつが、南の海の分厚い夜光貝を使う「厚貝(あつがい)細工」です。
奈良の正倉院の宝物にも、この夜光貝が使われています。
薄い貝の繊細さと、厚い貝の重厚さ。
日本の歴史的な螺鈿の作品は、その両方を楽しめるのが特徴です。
環境のちがいが工芸のちがいになりました。
おわりに|体験が「しらべ学習」になりました
はじめは、ただの旅の思い出づくりのつもりで螺鈿細工にトライしました。
でも貝の美しさに惹きつけられ、地理や歴史へと話が広がっていきました。
自分の手で作った体験が、そのまま、韓国や日本の歴史や地理について学ぶ入り口になりました。
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