2億5000万年前のサンゴ礁が栃木に!
いちごの里ファームをおとずれる前日、栃木県の葛生(くずう)地域にある小さな博物館に立ち寄りました。
ここでは、かつて南の海に広がっていたサンゴ礁が、日本列島において石灰石として地表にあらわれるまでの壮大な物語を学ぶことができます。
今回は、旅行でまなんだ石灰石のことや、粘土を使った石灰石の地層のシミュレーションについてまとめました。
葛生は石灰石の採掘がさかん
葛生では明治時代から石灰石の採掘が続けられてきました。
採れた石灰石はセメントの原料や製鉄、化学工業、農業用石灰など幅広い用途に使われています。
車窓から見えた石灰石の採石場の風景
博物館へ向かう道中、車窓からは階段状に削られた山肌が何箇所も見えました。
灰白色の岩肌がむき出しになった独特の景観は、石灰石の採掘跡です。
この階段状の構造は「ベンチカット工法」と呼ばれる採掘方法によるもので、山を階段状に削りながら石灰石を採取していきます。
石灰石は、掘削現場で砕かれて搬出される
採石場のふもとには、真っ白な砂の山がいくつもありました。
この山は、採掘した石灰石を砕いて粒度ごとに分けた「砕石」です。
用途に応じて細かさを変えて出荷され、セメントや建材、農業用などさまざまな形で私たちの生活を支えています。
葛生は車道も、白っちゃけていました。
葛生化石館で石灰石について学ぶ
このように、葛生は、石灰石の産地として知られています。
葛生化石館では、石灰石の成り立ちから、そこに含まれる化石、そして現在の採掘の様子まで、コンパクトながらわかりやすく展示されていました。
化石館の化石たち
化石館には、石灰石から発見されたさまざまな化石が展示されています。
中でも目を引くのが「フズリナ」の化石です。
フズリナはラグビーボールのような形をした単細胞生物で、2億5000万年前のペルム紀の温かい海の底で大繁殖していました。
フズリナの殻がつもって石灰石になりました。
化石が語る古代の海
ほかにも、サンゴやウミユリなどの化石が展示されており、ペルム紀の海の生きものを想像することができます。
手でさわれる化石がたくさん展示されていて、子供が興味を持ってまなべるように工夫されていました。
「ひ」の字型(馬蹄形)に広がる石灰石の謎
印象的だったのは、石灰石の分布を示した地図です。
地図を見ると、青く描かれた石灰石が、地表に馬蹄形というか、ひっくりかえった「ひ」の字型※にあらわれている様子がわかります。
※よく見ると、青い部分が左下に向かっていったんすぼまってから、広がる形に点在しています。
石灰石が「ひ」の字型に分布する理由
葛生の石灰石は、なぜこのような不思議な形になったのでしょうか。
その答えは「付加体」と「向斜構造」という2つのキーワードにあります。
プレートテクトニクスによる付加体

はるか昔、赤道付近の暖かい海で育ったサンゴ礁は、海洋プレートに乗って少しずつ日本へ向かって移動していきました。
図の右にある海山は、上が白っぽくなっていて、サンゴやフズリナによる石灰石がのっかっています。
これが日本列島側のプレートにぶつかり、乗り上げるようにして陸地の一部となりました。
くっついた部分を付加体とよびます。
向斜構造が生み出す「ひ」の字型

地層がプレートの動きで押されると、でこぼこに曲がります。
たまたま、石灰石のあった部分は、へこんだ部分(向斜構造)になりました。
長い年月をかけて地表が侵食されていくと、石灰石の層が「ひ」の字型に顔を出しました。
帰宅後のシミュレーション実験
博物館で学んだ「ひ」の字型の地層分布を、自宅で再現してみることにしました。
2億5000万年の地球の歴史を30分ほどで体験する実験に挑戦です。
用意した材料
使うのは4色の粘土と手芸用のワイヤーです。
(のちに、青が足りないことに気がついたので緑を混ぜて足しています)
- プレートテクトニクスの再現に使用する材料
-
- こむぎ粘土4色
- カッターマット
- クリアファイル
- 下敷き
- 手芸用ワイヤー
粘土は4色あったので、色ごとに役割を決めました。
- 粘土による地層の色の役割
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- 赤: 基盤となる岩石(火山岩など)
- 白: 主役となる石灰石層
- 青(緑): チャート(堆積岩の一種)
- 黄: 現在の地表、すなわち表土
石灰石の付加体を再現する
一色の粘土をのばしてシート状にしたら、クリアファイルの上にのせ、なじませます。
クリアファイルに挟むときれいにのばせた。
これを下敷きでこそげとると、下敷きに褶曲した粘土の層がのっかりました。
実際は、もっと複雑なメカニズムで付加体ができるのだと思います。
しかし、このシミュレーションで、日本列島に付加体がのっかっていく様子、褶曲ができる様子が再現され、理解しやすくなると思います。
粘土を丸めて向斜構造の上に堆積した地層を再現する
つぎに、向斜構造を再現するためのパーツをつくります。
向斜構造、つまりへこんだ地層の上には、表土が積層します。
それを黄色の粘土であらわすために、少し丸めて、半分にワイヤーでスライスします。
粘土を重ねて向斜構造の地層を再現する
向斜構造を粘土で再現するとなると、安定しないので、まずはさかさまにして、地層を作りました。
カッターマットの上に丸めた粘土の半分、その上にシート状にした黄、緑、白、赤の順番で重ねていきました。
地層の侵食をシミュレーション
いよいよクライマックスです。
ワイヤーを両手で持ち、盛り上がった頂上部分を斜めにスライスして、あらかじめ切れ目を入れておきます。
裏返して、少し傾きをつけて見てみましょう。
実際の、石灰石のある向斜構造の地層も、このように傾いているそうです。
「ひ」の字型(馬蹄形)の石灰石の出現
カットした上の粘土をはずすと、雨風で、地表が削られて、中の地層があらわれたところが再現されます。
「ひ」の字型の石灰石の分布があらわれることが確認できます。
博物館の地図と同じ形だ!
深くえぐった側では石灰石が曲がって現れ、浅くカットした側では青や黄の表土の下に石灰石が隠されている様子がわかります。
「ひ」の字型の内側には、黄色い表土(あたらしく堆積した地層)が見えています。
実際の馬蹄形の先にひろがっているの石灰石の層は、とても薄かったか、そこまで広がりを持っていなかったから、地表にはあまり現れていないのだと思われます。
実験でわかったこと
これを見ていると、一つの仮説が浮かんできます。
表面では離れた場所に見える石灰石も、じつは、地下では一続きのシートとしてつながっているのではないでしょうか。
ひの字の中心を掘ると石灰石が出てくる。
このシミュレーションは、地質学の基本をつかむのに役立ちます。
まとめ
博物館で「見て学ぶ」だけでなく、自宅で「手を動かして確かめる」ことで、地球の壮大な歴史がぐっと身近に感じられるようになりました。
カラフルなこむぎ粘土は100円ショップで売られています。
栃木の化石館に訪れたら、ぜひ粘土での実験も試してみてくださいね。
楽しみながら昔の地球のことを学べます。
















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