ボールペンは身近だけど謎だらけの道具
ボールペンが大好きな娘は、カラフルなボールペンでお手紙をかいたり、ボールペンを分解して観察したりしています。
そこで、ボールペンをもっと掘り下げてみることにしました。
すると、身近なボールペンが実は科学の宝庫だったことがわかりました。
ボールペンにはたくさんの種類がある

銀座伊東屋に行って、娘と一緒にさまざまな特徴のあるボールペンを選んで買ってきました。
ぜんぶ黒いインク。
- 写真のボールペン
-
- 水性インク: ボールペンてる、Vコーン、
ユニボールエア - ゲルインク: サラサクリップ、エナージェル
- 油性インク: ジェットストリーム、
ノックボールペン(ダイソー)
- 水性インク: ボールペンてる、Vコーン、
ボールぺんてる以外はボールのサイズは0.7mmでそろえました。
実験①:書き心地を比べる
まずは、書き心地をたしかめてみるために、それぞれのボールペンの名前を書いてみました。
すると、水性インクやゲルインクは太い線をかくことができました。
しかし、油性のジェットストリームやダイソーのノックボールペンは細い線になりました。
みんな書きごこちが全然ちがった。
実験②:水をかけてインクの強さを比べる
油性の名前ペンは、水に強いので、小学校のもちものに名前を書くのにつかいます。
ボールペンも同じように、油性インクのほうが水に強いんじゃないかと考えました。
雨で濡れたり、飲み物をこぼしたりしても平気かどうか、試してみました。
ボールペンで☆マークを書いて水をかけた

ボールペンの名前の隣に☆をおなじペンで書いて、水をたらして、1分ほど待ちました。
ぜんぶにじむんじゃないかな。
水をたらした結果

スポイトで水を数滴たらすと、大きな違いが現れました。
ボールぺんてる、Vコーン、エナージェルで書いた文字は水にインクが溶けて、色が広がって☆が見えなくなってしまいました。
一方、ユニボールエア、サラサクリップ、そしてジェットストリームなどの油性ボールペンはほとんど滲みません。
染料と顔料の違い

同じ水性ペンなのにボールぺんてる・Vコーンと、ユニボールエアとで結果が違った理由は、インクの「着色剤」の違いにあります。
ボールぺんてるやVコーンは水に溶ける「染料」、ユニボールエアは水に溶けない「顔料」を使っているのです。
水性だから水に弱いとは限らないことがわかりました。

また、油性であっても、ジェットストリームは黄色い成分が分離しました。
油性だから水に強いとも限らないことがわかりました。
実験③:ペーパークロマトグラフィーで色を分解
そこで、インクの性質についてもっとくわしく調べることにしました。
コーヒーフィルターと水をつかって、インクにどんな色が含まれているのかを調べる実験です。
用意するもの

用意するものは、家にすでにあるかもしれないものばかりです。
- 用意するもの
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- コーヒーフィルターを短冊状に切ったもの
- 水を入れたコップ
- 7種類のボールペン
コーヒーフィルターはダイソーの漂白と書かれた白いものを選び、2cm幅にカットしました。
ペーパークロマトグラフィーの手順

フィルターの下から2センチくらいのところに、各ペンで小さな黒い点を描きます。
それを割り箸に挟んで、コップの水にフィルターの先だけを浸けます。
インクの点は水に浸からないように注意するのがポイントです。
点を小さくすると、うまく色が分離します。
びっくりの結果!

水につけて、フィルターの上のほうまで水が登ってくるのを待ちました。

すると、水性インクのボールぺんてるとVコーンの黒い点から、青・紫・ピンクの色がじわじわと広がっていきました。
虹みたいになった。

一方、水性のユニボールエアと、ゲルのサラサクリップは、ほとんど色が分かれませんでした。

そして、当初、油性ペンは水に強いと思っていたにもかかわらず、ジェットストリームは色が分離しました。
なぜ色が分かれるの?

Vコーンは「染料」という水に溶けるインクを使っているので、水と一緒に上へ移動します。
インクに含まれる色ごとに移動するスピードが違うため、色が分かれて見えるのです。
一方、顔料のインクは水に溶けないので、その場から動かなかったというわけです。
実験④:リフィルのインクの粘性をしらべる
普段はボールペンのペン先から出てくるインクばかりを見かけますが、リフィルの中のインクはどんな具合なのでしょうか。
リフィルをカットして、爪楊枝で感触を確かめてみました。
フォロワーはインクを守る蓋

リフィルのインクのお尻側には、透明なジェル状のものが入っているのが見えます。
減っていくインクを追いかけて移動するので、フォロワーと呼ばれています。
フォロワーは、インクが飛び出してペンをよごしたり、インクが乾いて書けなくなったりしないように、蓋の役割をしているそうです。
この、フォロワーの付近でカッターで切り込みを入れて、ポキっとリフィルを折っていきました。
ダイソーのノックボールペンのインクはネバネバ

ダイソーのノックボールペンは、フォロワーがありません。
リフィルのお尻をカットして、爪楊枝を入れてみると、糸を引くくらい粘り気がありました。
昔ながらの、乾きにくくて、ネバネバのインクが使われているようです。
ジェットストリームのインクはトロトロ

同じ油性インクでも、ジェットストリームはトロトロでした。
ジェットストリームのリフィルには、フォロワーがありました。
エナージェルのインクはサラサラ

エナージェルのリフィルに切れ込みを入れ、ポキっと折ったとき、インクが飛び散って大変なことになりました。
エナージェルはサラサラのインクでした。
手についたインクはしばらくとれませんでした。
実験でわかったこと
今回の実験でわかったことをまとめます。
1. 「油性=水に強い」とは限らない
油性ネームペンでは当たり前だったことが、ボールペンでは当てはまらないケースがありました。
同じ「油性」でも、インクの性質は製品ごとに違うようです。
2. 黒いインクは「混ぜて作られている」
クロマトグラフィーで分解すると、黒い点から青、紫、黄色、ピンクなど様々な色が出てきました。
一つの色ではなく、複数の色を混ぜて黒を作っていたのです。
3. 顔料と染料で水に溶けやすさが違う
ユニボールエアが水性なのに滲まなかった理由は、顔料。
また、染料を使っていると滲みやすくなります。
まとめ:伊東屋で買ったペンから広がった世界
お気に入りの文房具をきっかけに、こんな発見ができるなんて思ってもいませんでした。
お子さんと一緒に、ぜひ身近なものの「当たり前」を実験で確かめてみてください。
きっと「あれ?」という発見がたくさん待っていますよ。


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