歴史と品種の特徴を知って楽しむ!
いちご狩りから帰ってきた娘が、目をキラキラさせてこう言いました。
わたしもイチゴ育てたい!
さっそくホームセンターに行ってみたら、棚にはたくさんの品種がずらり。
名前も見た目もいろいろあって、どれを選んだらいいのか迷ってしまいました。
イチゴのルーツを知ると、品種えらびが楽しくなる
ホームセンターに並んでいるイチゴの苗には、それぞれ長い歴史があり、店頭にならぶ品種として選ばれた理由があります。
「甘さ重視」「育てやすさ重視」の品種の背景を知るとグッと選びやすくなります。
ここではまず、イチゴが日本にやってきた歴史をかんたんにたどってみましょう。
オランダ船でやってきた「食べられない」果物

イチゴが日本にはじめてやってきたのは、江戸時代のおわりごろです。
オランダ船によって長崎の出島にもたらされたので、当時は「オランダイチゴ」と呼ばれていました。

出典:The legend(リトルスカーレット)Geminiで背景を生成
ところが、真っ赤な実が「血」を連想させるとして敬遠され、食べるものとしてはなかなか広まりませんでした。
当時の日本人にとっては見た目が怖かったんですね。
イチゴはしばらくの間、一部の人が観賞用として楽しむ、珍しい外国の植物にすぎませんでした。
新宿御苑から生まれた日本初の品種「福羽」
イチゴが「食べるもの」として注目されはじめたのは、明治時代に入ってからのことです。
園芸学者の福羽逸人(ふくば はやと)は、フランスから取り寄せたイチゴの種子を新宿御苑で10年以上かけて研究。
1899年に福羽(ふくば)という日本初のイチゴ品種を発表しました。
新宿御苑の温室に行ったことある!
この福羽いちごは、もともと皇室に献上するための特別な品種で、一般の農家が栽培できるようになったのは1919年のことでした。
とちおとめやあまおうも、福羽いちごから生まれました。
東のダナー、西の宝交早生
その後、1957年にアメリカから導入されたダナーが東日本で、1960年に兵庫県宝塚市で生まれた宝交早生が西日本で栽培されるようになりました。
宝交早生は、全国に広がり、1970〜80年代には宝交早生だけで全国の作付面積の5〜6割を占めるほどの人気品種となりました。
そして、1980年代から1990年代にかけて、日本のいちご市場は大きく変わっていきます。
「東の女峰、西のとよのか」と品種戦国時代
東日本では、栃木県農業試験場が生み出した女峰(にょほう)が大人気に。
鮮やかな赤色にきれいな三角形、適度な酸味と甘みのバランスがよく、ケーキ用として売れに売れました。
果皮がかたくて輸送にも強かったので、関東の市場をほぼ独占しました。

いっぽう西日本では、農林水産省 野菜茶業試験場 久留米支場が生み出したとよのかが圧倒的な支持を集めました。
大粒で酸味が少なく、甘みと香りがとても強いのが特徴です。
生で食べるのがいちばんおいしいタイプで、贈答用としても人気でした。
東日本と西日本で求められるものが違ったんだね。
この二大品種の争いをきっかけに、全国の農業試験場が、うちの県もフラッグシップ品種をつくるぞ!と一斉に動きだしました。
これが、いわゆる「イチゴ戦国時代」です。
いまホームセンターにあれだけたくさんの品種が並んでいるのは、この熾烈な開発競争のおかげなのです。
ホームセンターの苗を5つのタイプに分けてみよう
ホームセンターなどで、イチゴの品種がたくさん並んでいても、じつはおおまかに5つのタイプに分類できます。
何を楽しみたいのか、先に決めておくと、お店で苗を前にしたときに迷いにくくなります。
それぞれのタイプの特徴と、代表的な品種を見ていきましょう。
タイプ① 観察と食べ比べが楽しい「伝統品種」

日本のいちご栽培の歴史をつくってきた品種たちです。
品種ごとに味や形がはっきりと違うので、食べ比べをしながら味覚の歴史を体験するのにぴったりです。
露地やプランターでもしっかり育つ強さをもっているので、いちごの基本的な育ち方を観察する教材としても最適です。
わが家はこのタイプから6品種選びました。
- 伝統的・代表的なイチゴの品種とその特徴
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- 女峰(にょほう):昭和の定番
- 特徴: しっかりとした酸味があるのが魅力。その酸味が生クリームの甘さを引き立てるため、ショートケーキなどの製菓用として今も根強い人気があります。
- とちおとめ:東日本のエース
- 特徴: 「女峰」の血統を受け継ぐ後継品種。甘みが強く、果実が適度に硬いため輸送にも強く、東日本のスーパーで最もよく見かけるスタンダードな品種です。
- 麗紅(れいこう):栽培の入門種
- 特徴: 露地栽培(屋外での栽培)でも丈夫に育ちます。病気や環境変化に強く、初心者でも収穫の喜びを味わいやすい品種です。
- 宝交早生(ほうこうわせ):家庭菜園のロングセラー
- 特徴: 昭和30年代に登場して以来、家庭菜園用として長く愛されています。病気に強く、プランターでも作りやすい強健さが特徴です。
- アイベリー:ジャンボいちごの代表
- 特徴: とにかく一粒が巨大になる品種。「どうしてこんなに大きくなれるのか?」という植物の成長エネルギーを観察するのに最適です。
- レッドパール:中まで真っ赤な真珠
- 特徴: 一般的なイチゴは中が白いことが多いですが、これは芯の方まで赤く染まります。他の品種と「断面比較」をすると、色の違いがはっきりとわかります。
- 女峰(にょほう):昭和の定番
タイプ② 花も実も楽しめる「観賞タイプ」

撮影時に雨が降っていて、濡れています。。。
食べるだけでなく、育てている期間ずっと花の美しさも楽しめるのがこのタイプです。
代表格はサントリーフラワーズのローズベリーレッド。
ふつうのいちごの花は白ですが、この品種はとても鮮やかな赤い花を咲かせます。
春から秋にかけて長い期間、赤い花とルビー色の実が同時に楽しめるので、ベランダの彩りにもなります。
赤いお花のいちご、かわいい!
栽培ワンポイント:秋の花は切りましょう
ローズベリーレッドは四季成り性なので、秋にも花が咲きます。
ただし、この時期に実をつけさせると、株に蓄えるはずの養分が実のほうに使われてしまいます。
春にたくさん大きな実を収穫したいなら、秋に出てきた花はハサミで早めに切り取って、根や株を充実させることにエネルギーを集中させましょう。
タイプ③ とにかく失敗しにくい「超・初心者向け」

家庭菜園初心者がつまずきやすい「病気」や「実がつかない」という問題を、品種の力で解決してくれるのがこのタイプです。
らくなりイチゴ(サントリーフラワーズ)は、うどんこ病などにかかりにくい高い耐病性をもっています。
楽して・とれこ(Jardinブランド)は、特別なお世話をしなくても花や実が自然につきやすいのが特徴です。
超・初心者向け品種の栽培ポイント
らくなりイチゴ → 植えつけ直後の最初の花は切り取る。まず根をしっかり張らせてから実をつけさせるのがコツ。
楽して・とれこ → 雨の当たらない日当たりのよい軒下で育てる。雨のはね返りで土の中の病原菌が葉につくのを防げる
病気の強さは遺伝子レベルで設計されています。
タイプ④ 長く収穫できる「四季成りタイプ」
ふつうのいちご(一季成り)は、秋の短い日と低温を感知して花芽をつくり、春に一度だけ収穫するのが基本です。
ところがモンタナのような四季成り品種は、日の長さや温度への反応がゆるやかで、春から秋にかけて長い期間にわたって実をつけ続けます。
モンタナはアメリカで育種された比較的新しい品種で、特大サイズの白い花をたくさん咲かせるのが特徴です。
花が大きくて見ごたえがあるので、観賞用としても楽しめます。甘くてかわいいハート型の果実が、春・初夏・秋と長い期間にわたって実ります。
長く食べられるの、いいね!
四季成りは一季成りと楽しみ方がまったく違います。
コンパクトな株姿で、ハンギングバスケットやプランターでもよく育つので、ベランダ菜園にぴったりの品種です。
四季成りイチゴの注意点
長期間にわたって実をつけるぶん、株の体力消耗も大きくなります。
春と秋に月1回ほどの追肥をわすれずに行いましょう。
真夏の猛暑時には一時的に花が咲かなくなることがありますが、涼しくなればふたたび開花が始まります。
タイプ⑤ 味にとことんこだわる「本格派」
各都道府県の農業試験場が、甘さ・酸味・かたさ・香りのバランスを極限まで追求して生みだした、いわばフラッグシップ品種です。
お店で見つけたらぜひ手にとってほしい、個性派ぞろいのラインナップを紹介します。
- 本格派品種の個性くらべ(詳細解説)
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- 章姫(あきひめ):細長い甘い貴婦人
- 最大の個性: 他の品種に比べてシュッとした細長い円錐形が特徴です。
- 味わい: 酸味が極めて少なく、小さなお子様でも食べやすいさっぱりとした甘さ。果肉が非常に柔らかいため、輸送には向きませんが、その場でおいしさを味わう「いちご狩り」では主役級の品種です。
- さちのか:ビタミンCのエース
- 最大の個性: 「とよのか」と「アイベリー」の良さを引き継ぎ、ビタミンC含有量が他の品種より多いのが自慢です。
- 味わい: 糖度が高く、シーズンを通じても味がボケにくい安定感があります。果実もしっかりしており、食べ応えのある優等生タイプです。
- やよいひめ:春までおいしいロングセラー
- 最大の個性: 名前(弥生=3月)の通り、気温が上がる春先でも実の硬さをキープできる驚きのキープ力を持っています。
- 味わい: 大粒で色が少しオレンジがかった赤色が特徴。1月から初夏の6月頃まで長く収穫でき、ずっと安定したおいしさを届けてくれる品種です。
- ふさのか:桃が香る「幻のいちご」
- 最大の個性: 口に入れると、いちごなのに「桃のような芳醇な香り」が鼻に抜ける不思議な体験ができます。
- 味わい: 千葉県で生まれ、非常にデリケートで流通量が少ないため、出会えたらラッキーな「幻」の存在。香りと甘さのハーモニーが絶品です。
- 章姫(あきひめ):細長い甘い貴婦人
ふさのかの桃の香り、一度かいでみたいですね。
お店で実践!良い苗の見分け方
品種を決めたら、次は「どの苗を手に取るか」です。
同じ品種でも、苗の状態によって植えつけ後の生育がまったく違ってきます。
ホームセンターの売り場でチェックしたい3つのポイントを紹介します。
クラウンの太さをチェック
「クラウン」とは、いちごの株元にある短くて太い茎の部分です。
ここに養分がたくわえられているので、クラウンが太くてがっしりしている苗ほど、植えつけ後の生育が力強くなります。
目安として、クラウンの直径が1cm以上あるものを選ぶと安心です。
葉をそっとかき分けて、株元をチェック。
葉の色と枚数を見る
健康な苗は、葉の色が濃い緑色でツヤがあります。
黄色っぽい葉や、白い粉のようなもの(うどんこ病の可能性)がついている葉がある苗は避けましょう。
葉は3枚以上しっかりついているものが理想的。
根の状態を確認する
ポットの底穴から根がすこし見えていたら、それは根がしっかり張っている証拠です。
根の色は白っぽいものが健康な状態。茶色く変色していたり、ぬめりがあるものは根腐れの可能性があるので避けましょう。
お店の苗がポットの底から根が飛び出しすぎている場合は、長期間売れ残って根詰まりを起こしている可能性もあるので注意が必要です。
- いちごの苗選びチェックリスト(健全な苗の見分け方)
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- クラウン(成長点)の状態:
- チェック: 茎の根元の膨らみ「クラウン」が太くてがっしりしているか。(直径1cm以上が豊作の目安です)
- 葉の健康度:
- 枚数と色: 本葉が3枚以上あり、色が濃い緑色でツヤツヤしているものを選びます。
- 病害虫の有無: 葉の表面や裏に「白い粉(うどんこ病)」や「茶色い斑点(炭疽病など)」がないか確認します。
- 根の張り具合:
- 底の確認: ポットの底の穴から、元気な白い根が少し見えているくらいが理想的です。
- 根の色と質: 根が茶色く変色していたり、ぬめりがあったりするものは根腐れの可能性があるため避けます。
- クラウン(成長点)の状態:
わが家が選んだ6品種と、これからの計画
先日、娘がいちご狩りに行って、摘みたていちごの重さやつぶつぶの数を調べる自由研究をしました
イチゴを食べたり、はかったり、切ったり、数えたりしているうちに、育ててみたくなったそうです。
そこで、ホームセンターに出かけて「伝統品種」タイプの6品種を購入してきました。
わが家のイチゴ苗ラインナップ
今回選んだのは、女峰・麗紅・宝交早生・とちおとめ・アイベリー・レッドパールの6品種です。
おいしいイチゴが採れるといいな!
大きさ、色、甘さ、酸味の違いが楽しみだね。
この6品種を選んだ理由は3つあります。
① 味の違いがわかりやすい
女峰の酸味、とちおとめの甘さ、アイベリーの大きさなど、品種ごとの個性がはっきりしています。
食べ比べたときに「こんなに違うんだ!」と実感できるラインナップです。
② 見た目の違いを観察できる
レッドパールは果肉の中まで赤い品種です。
断面を切って比べると、アントシアニン色素の分布が品種によって異なることを目で見て確認できます。
アイベリーは大粒の品種なので、ほかの品種と並べて大きさの違いを実感できます。
③ 育てやすく、強い品種が多い
麗紅や宝交早生は、露地栽培への適応力が高い品種として長く愛されてきました。
プランターでの栽培にも向いていて、初心者の私たちにも安心です。
明日はいよいよ植えつけ!
苗は準備できました。あしたはプランターに植えつけます。
早く植えたい!
次の記事では、いちご専用の土がどうしてすごいのか、植えつけのときに気をつけるポイントを、理科の実験みたいに解説していきます。
まとめ
ホームセンターに並ぶイチゴの苗は、福羽博士の新宿御苑での品種開発、女峰ととよのかの東西対決、そして全国の農業試験場による品種戦国時代を経て生まれたものです。
品種は大きく5つのタイプに分けられるので、「観察したい」「花も楽しみたい」「とにかく失敗したくない」「長く収穫したい」「おいしさにこだわりたい」という自分の目的にあわせて選ぶのがコツです。
お店では、クラウンの太さ・葉の色・根の状態をチェックするだけで、良い苗を見分けることができます。
わが家は、いちご狩りでの自由研究をきっかけに、観察と食べ比べが楽しめる伝統品種6つを選びました。
これからの成長が楽しみです。













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