100年前のアメリカと現代の日本をつなぐマステ物語
100円ショップで、色とりどりのマスキングテープに目を輝かせる子供をよくみかけます。

手頃な価格だから、ねだられるとつい買ってしまいます。
このマスキングテープには素敵な物語があり、子供の創造力をはぐくむ無限の可能性が詰まっています。
今回は、そんなマスキングテープの魅力を一緒に探ってみましょう。
車の塗装から生まれた、100年前のアイデア
マスキングテープの誕生は1925年のアメリカ。
当時23歳だったリチャード・ドリューという若きエンジニアが、自動車工場で働く職人さんたちの困りごとを解決したことから始まりました。
車の2色塗りのに使われていたのは医療用テープ
当時、車を2色塗りにすることが流行したため、職人たちはペイントマスクとして新聞紙などを使い、端をテープで固定して塗り分けていました。
粘着力のあるテープでは、剥がすときに表と裏とで層割れを起こしてしまうので、粘着力の弱い医療用テープを使っていました。
しかし、粘着力が弱いと、塗料がテープの下に入り、その下の塗料といっしょに固まってテープと一緒に剥がれてしまいます。
また、医療用の厚みのあるテープでは、仕上がりがシャープになりません。
ドリューが開発したマスキングテープ
そこでドリューが開発したのが、クレープ紙という薄い紙にニカワを含浸させた「貼ってもきれいに剥がせる」マスキングテープでした。
面白いのは「スコッチテープ」という名前の由来。
最初の試作品は粘着剤が少なくて剥がれやすく、イライラした職人さんが
「そのケチ(スコッチ)な上司に、もっと粘着剤を付けろと言ってこい!」
と文句を言ったことから、この名前が付いたそうです。
日本で花開いた、マスキングテープ文化
そんな工業用のテープが、日本で、子供たちに大人気のかわいいアイテムに変わりました。
日本のマスキングテープの特徴
出展:TAKIPAPER 最高の素材、日本の紙(和紙を漉く機械)
日本では、さまざまなテープが和紙で作られてきました。
和紙は頑丈だったので、ニカワを含浸させる必要はありませんでした。
和紙のテープの特徴は以下のとおり。
- 和紙のテープの特徴
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- 貼りやすい
- きれいに剥がせる
- 下地が透けて見える
- 心地よい質感がある
- にじまずに書ける
- ちぎった時の形がかわいい
カモ井加工紙がハエ取り紙メーカーとして創業しシーリング用テープも開発
ドリューがマスキングテープを開発していたのと同じ時代である1923年に、カモ井加工紙が、ハエ取り紙メーカーとして創業しました。
その後、さまざまな用途でテープを開発していきました。
- 1960年代
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- 自動車修理に使う鈑金塗装用の和紙粘着テープ
- 段ボール用のクラフトテープ
- 1970年代
-
- 段ボール用の布粘着テープ
- 1980年代
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- 建物シーリング作業用の和紙粘着テープ
カモ井加工紙は、日本の伝統的な和紙の技術を活かし、手でちぎれる薄さと、貼ってもきれいに剥がせる絶妙な粘着力を実現しました。
日本のマスキングテープ発展のきっかけ
3人の日本人女性が、そんな日本のマスキングテープに魅了され、スクラップブックやクラフトなどのアート作品に使い始めました。
3人はカモ井加工紙に自主制作のリトルプレスなどを披露して、いろいろな色のテープをつくるように要望。
出展:mt stock 「ロバの本屋で、mt誕生の原点に立ち返る」の巻
そのアイデアに動かされたカモ井は、2008年に装飾用の「mt」ブランドを立ち上げました。
カモ井加工紙は、今では3,000種類以上のデザインを展開し、世界中にファンを持つブランドに成長しました。
100均から高級店まで、様々な顔を持つマスキングテープ
他のテープメーカーも追従して、日本に豊かなマスキングテープの文化が生まれていきました。
100円ショップで見つかる宝物
ダイソーやセリアで売られているマスキングテープは、まさに「入門編」。
6色セットやミシン目入り、パール仕上げなど、110円とは思えない充実のラインナップです。

子供たちが欲しがるのも無理はありません。
ダイソーでも、OEMメーカーである協和紙工などと共同で和紙をつかった日本製のマスキングテープを作り、販売しています。
文具店で出会う、ちょっと特別なテープ
東急ハンズやロフトなどの文具コーナーに行くと、mtブランドの限定コラボ商品などが200〜800円で並んでいます。
アーティストとのコラボレーションや、季節限定デザインなど、100均では手に入らない特別感があります。
実は身近な工業用テープ
ホームセンターで売られている無地のマスキングテープ。

これが本来の姿だったわけですが。。。
カモ井、3M、ニットーなど、各メーカーが工業用に開発した高品質なテープは、200〜1,000円程度。
シンプルだけど、その品質の高さは折り紙付きです。
人気のマスキングテープ
さて、各メーカーのクラフト用の人気商品を、具体的なシリーズ名や特徴とともにご紹介します。
これらから、各メーカーのデザインの方向性や得意な技術が見えてきます。
カモ井加工紙 (mt)
mt exシリーズ
出展:Amazonカスタマーレビュー
様々なテーマを図鑑のように美しくデザインした、mtの定番にして絶大な人気を誇るシリーズです。

たくさんありすぎて、模様については説明しきれません。
動物、植物、鉱物、天体などのモチーフは、その精密さとデザイン性の高さから、コレクションするファンがたくさんいます。
mt slimシリーズ
出展:mt stock by nami ogihara(写真はslimシリーズではなく6mm幅の工業用テープ)
3mmや6mmといった細い幅のマスキングテープが2〜3個セットになったシリーズです。
手帳の罫線のように使ったり、色柄を組み合わせて繊細なデコレーションを楽しんだりできます。
使い勝手の良さから、手帳ユーザーに特に人気があります。
mt for PACK
梱包用の丈夫な粘着テープです。
通常のマスキングテープよりも粘着力が強く、段ボールなどの封緘に安心して使えます。
デザインがおしゃれなので、無地の箱に貼るだけで可愛いオリジナル梱包が完成します。
マークス (MARK’S)
水性ペンで書けるマスキングテープ・ミシン目入り
手帳デコレーションの定番アイテムで、パイロット社とのコラボ商品です。
日付やタイトル、デコレーション用のモチーフがあらかじめ印刷されており、ミシン目で一つずつ切り離して使えます。
水性ペンで書き込めるため、手帳のフォーマット作りに最適です。
「ポール & ジョー」コラボレーションシリーズ
PAUL & JOE La Papeterie コラボ 西洋菊(Amazon)
人気ファッションブランド「PAUL & JOE La Papeterie」とのコラボ商品です。
ブランドの象徴である猫の「ヌネット」やクリザンテーム(西洋菊の一種)をモチーフにしたデザインは、発売されるとすぐに話題になりました。
こちらもパイロット社とのコラボで、水性ペンに対応しています。
maste (マステ) ジャパニーズシリーズ
和のモチーフをモダンでおしゃれにデザインしたシリーズ。
富士山や相撲、だるまといった日本の伝統的な柄が、ポップで洗練されたデザインに生まれ変わっています。
海外の方へのお土産としても人気があります。
ラウンドトップ (ROUND TOP)
Yano design 型抜きマスキングテープ
ラウンドトップの代名詞ともいえる、矢野デザインの型抜きマスキングテープです。
特にアジサイやミモザなどの植物をモチーフにしたシリーズは、貼るだけで花を飾ったように華やかになると大人気です。
人気イラストレーターコラボシリーズ
イラストレーターの「ますこえり」さんや「福田利之」さんなど、独自の世界観を持つクリエイターとのコラボ商品が人気です。
レトロで味のあるイラストは、手紙や贈り物のラッピングに使うと温かい雰囲気を添えてくれます。
BGM (ビージーエム)
空図鑑シリーズ 箔押しマスキングテープ
BGMの得意とする箔押しをふんだんに使った、豪華でキラキラしたシリーズです。
特に星座、空、海、朝焼けなどをテーマにしたデザインは、手帳やカードを華やかに彩りたい時にぴったりで、不動の人気を誇ります。
細幅マスキングテープ
3mmや5mmといった細い幅のテープ。
シンプルなドットやライン、可愛らしい小花柄などがあり、デコレーションの縁取りや仕切り線として大活躍します。
古川紙工
レトロ日記シリーズ
昭和レトロな純喫茶のクリームソーダやプリン、町のパン屋さん、なつかしのお菓子などをモチーフにしたシリーズ。
その愛らしくてどこか懐かしいデザインは、幅広い世代から人気を集めています。
わたしびよりシリーズ
「ゆるっとかわいい」をテーマに、手書き感のある動物やお花が描かれたシリーズ。
見ているだけでほっこりするような、優しい気持ちになれるデザインが魅力です。

お気に入りの一品は見つかりましたか?
親子で楽しむ、マスキングテープの世界
マスキングテープはカラフルで柄やラメなどの質感もさまざま。
楽しみ方もたくさんあります。
コレクションする楽しさ
子供がマスキングテープを集めたがるのは、実はとても自然なことだと思います。

小さくて、カラフルで、並べるときれい。
コレクション欲を満たしてくれる要素が詰まっています。
専用のケースに入れたり、ノートに貼って「マスキングテープ図鑑」を作ったり、使い終わったテープの芯を集めて記録したり。
集めることそのものが、整理整頓の練習にもなります。
一緒に作る喜び
デコレーション遊び
– 手紙や手帳をかわいくデコレーション
– 写真をアルバムに貼るときの飾り付け
– プレゼントのラッピングアクセント
実用的な使い方
– お名前シールの代わりに(剥がせるから便利!)
– おもちゃの整理整頓ラベル
– カレンダーの予定マーク
アート作品づくり
– テープを貼って絵の具を塗り、剥がして模様を作る「テープレジスト」
– 紙に貼ってちぎり絵を作る
– 窓ガラスに貼るステンドグラス風アート
マスキングテープには様々な国のメーカーがある
今では、素敵なマスキングテープのメーカーは、国外にもたくさんあります。
- その他のマスキングテープブランド
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- 3M(アメリカ):元祖マスキングテープの会社で、シンプルかつ機能的
- テサ(ドイツ):環境に優しい素材で、ヨーロッパらしい洗練されたデザイン
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YUBX / Knaid(中国):テーマ別にコーディネートされた安価な多巻セット
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台湾菊水 (Kikusui)(台湾):台湾のモチーフ、工業メーカー発の高品質
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La Dolce Vita / OURS / Loi Design(台湾):芸術性の高いデザイン
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Molinta(中国):人気キャラクター主役、IP主導のキュートなデザイン
メーカーごとの特徴を知ると、選ぶ楽しさも倍増します。
おわりに 〜 110円から始まる、無限の可能性
マスキングテープは、ただの「かわいいテープ」ではありません。
100年の歴史を持ち、日本の文化が世界に誇る魔法のアイテムなのです。
次に100円ショップで子供にマスキングテープをおねだりされたら、ぜひ一緒に選んでみてくださいね。

親子の創造的な時間が始まるかもしれません。
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