7歳娘が歌舞伎の観劇デビュー
~事前準備から当日まで完全ガイド~
小学校1年生の娘が、学童のイベントで隈取メイク体験と歌舞伎観劇に挑戦してきました。
私たち親の不安とは裏腹に、帰ってきた娘は「楽しかった!」と満足そうでした。
むずかしい日本文化だと身構えることなく、まずは体験してみることの大切さを実感しました。
隈取メイク体験で歌舞伎の世界に足を踏み入れる
最初に、どのような体験だったのか、かいつまんで説明します。
隈取メイクの会場は貸し会議室
出展:Gemini2.5ProによるCG
子供たちは、まず午前中に、プロの歌舞伎役者におそわりながら、本格的な隈取メイクをさせてもらいました。
会議室のような空間に入ると、横長の机が並べられ、それぞれの席に鏡がガムテープで固定されていました。
机の上には油やおしろいのペースト、赤いペーストがのった絵の具パレット、筆や牡丹刷毛、スポンジなどが用意されていました。
本格的な道具と環境で学んだメイク手順
出展:Gemini2.5ProによるCG
着席して説明をきいたら、ヘアバンドでおでこを出し、まずは眉毛に太白(たいはく)というロウをぬってかためます。
鬢付け油を顔全体の下地にするのですが、ここでは省略。
顔全体に筆でおしろいを塗り、スポンジで広げていきます。
赤いラインを目の両サイドに縦に入れ、唇や目の両端、眉のラインを黒く描いて完成です。
メイクの色に込められた意味を理解
出展:Gemini2.5ProによるCG
決めのポーズで写真をとって、歌舞伎役者になりきって楽しい時間を過ごしました。
メイクの最中、先生から赤や青の色の意味を教えてもらいます。
- 歌舞伎メイクの色の意味
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- 赤い紅隈(べにぐま): 正義感・勇気
- 青い藍隈(あいぐま): 悪人・怨霊
- 茶色い茶隈(ちゃぐま):鬼・妖怪
青は、悪人・怨霊などを意味すると書きましたが、ヒゲや頬のコケた様子をあらわしていることもあります。
また、ベースの色にも意味があります。
- 白い顔:恋愛系・高貴な身分
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- 高貴な身分や恋愛系の役柄。極端に白い顔は、道化役や極悪人を示す場合もあり。
- 赤い顔:元気系・力強い敵役
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- 力強さやワイルドさを表現。特に「赤っ面」は、特徴的でインパクトのある敵役。
- 肌色:大人の顔
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- 比較的常識的で善良な大人。「勧進帳」の弁慶や「仮名手本忠臣蔵」の大星由良之助など。
隈の構図に込められた意味を理解
そして、隈取の構図がキャラクターを決定づけます。
今回、娘がチャレンジしたメイクは、貝の身をむいた形に似ていることから「むきみ隈」とよばれ、色気のある若者役に用いられます。
『菅原伝授手習鑑』の「桜丸」、『助六由縁江戸桜』の「助六」などのほか、『春興鏡獅子』に登場する獅子の精、「鏡獅子」も、霊獣としての力強さと、若々しく美しい舞いを見せることから、このむきみ隈が用いられることがあります。
隈取メイク後は、押隈で記念品づくり
メイクが完成した後は、押隈をつくりました。
顔をあらったら、持ってきたお弁当を食べながらリラックス。

はやく歌舞伎が見たいなってワクワクしてきた。
新国立劇場で本物の歌舞伎を体験
午後は、新国立劇場の1等席で、「仮名手本忠臣蔵」の二段目と九段目を観劇しました。
人間国宝の中村梅玉や、映画「国宝」の中村鴈治郎が出演しています。

私も一緒にみたかった。
歌舞伎名作入門シリーズで初心者にも安心
出展:美術展ナビ
今回は「歌舞伎名作入門」として、分かりやすい解説付きで上演される公演でした。

口上人形が説明してくれた。
国立劇場では定期的にこのような入門向けの公演を開催しています。
初めて歌舞伎を見る人でも、物語や登場人物のことを理解して、魅力を十分に味わえるようになっています。

初心者にとって心強いサポートですね。
事前準備の重要性と課題
かぶきがわかるねこづくし絵本1 仮名手本忠臣蔵(Amazon)
事前準備として、講談社の「かぶきがわかるねこづくし絵本1 仮名手本忠臣蔵」を2回ほど一緒に読んでストーリーを頭に入れていきました。
しかし、実際に観てみると娘にはストーリーがわからなかったとのこと。

何を言ってるのかわからなかった。
この講談社のシリーズは、ねこの毛色でキャラクターをうまく描きわけ、ストーリーも簡潔なので、子供が歌舞伎を理解するにはもってこいです。

切腹など、難しい文化的背景を説明する、良いきっかけにもなりました。
しかし、実際の歌舞伎の複雑なストーリーを理解するには、足りません。

いや、大人でも中々わからないよ。

歌舞伎にふれたこと自体が貴重な体験だね。
学習と観劇のデータ
年齢:7歳2ヶ月
季節/時期:9月下旬
所要時間:7時間(絵本の事前学習・メイク・観劇)
難易度:★★★
必要なもの:歌舞伎のストーリーがわかる絵本、歌舞伎メイク道具、オペラグラス、歌舞伎の観劇チケット
応用アイデア
今回は、民間学童のイベントによって、隈取メイクと歌舞伎の観劇を1度に経験することができました。
しかし、もっと別のルートでも歌舞伎を楽しむことができます。
他の隈取メイク体験サービス
出展:歌舞伎美人
たとえば、歌舞伎座ギャラリーでは「隈取体験処」があり、無料で隈取を描く体験ができます(入場料600円のみ)。
また、都内だけで見ても、さまざまなワークショップや教室が開催されています。
- 歌舞伎を学べるワークショップや教室の例
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- お茶の水女子大学のワークショップ: 毎年夏に開催、歌舞伎役者を講師に迎えて演技体験。
- 荒川区「小学生親子歌舞伎教室」: 親子で歌舞伎に親しむための体験教室。
- 国立劇場「小学生のための歌舞伎体験教室」: 小学生向けの歌舞伎体験教室。プログラムは毎年変更。
価格帯は無料から数万円まで幅広く、家族の予算に合わせて選択できます。
家庭での歌舞伎文化への親しみ方
図書館で歌舞伎の絵本を借りて読み聞かせから始めましょう。

YouTubeにも歌舞伎の解説動画があります。
歌舞伎用の白粉やメイクセットがあれば、自宅で歌舞伎メイクをして楽しむこともできます。
次のステップとしては、国立劇場の「歌舞伎鑑賞教室」がおすすめ。
「実演を交えた解説」と「名作の鑑賞」で構成されていて、歌舞伎を初めて見る子供たちにもわかりやすい内容です。
親の気づき
今回の体験を通じて、事前準備の方法について反省点がありました。
娘がもっと理解を深められるよう、あらかじめストーリーを説明しましたが、最も大切なことは、小学校1年生という若さで歌舞伎に一度触れることができた体験そのものです。
完璧に理解できなくても、本物の舞台を見て、隈取メイクを体験し、日本文化の一端に触れたことは、娘にとって貴重な財産となりました。

これからは、ストーリーなんて気にせず楽しむように伝えようと思います。
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